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ヤクルト優勝の立役者・「不死身のエース」館山を見よ!
二宮清純レポート
〔PHOTO〕wikipedia

何度手術をしても、館山はマウンドに舞い戻る。以前よりも数段パワーアップして—。なぜ、そこまで体を追い込むのか。どうして、復活できるのか。「不死身のエース」の秘密を解き明かす。

縫いも縫ったり151針

プロ野球ファンなら、1度は耳にしたことがあるだろう。トミー・ジョン手術—。ひじの側副じん帯再建手術を、こう呼ぶ。損傷したじん帯を切除し、別のところから腱の一部を摘出し、移植する。

1974年、ドジャースの左腕トミー・ジョンが左ひじの腱を断裂した際に、チームドクターだったフランク・ジョーブ博士が初めて行ったことに由来する。

この手術を3度受けながら復活を果たしたピッチャーがいる。東京ヤクルトの館山昌平だ。

7月11日、1019日ぶりの勝ち星をあげ、球界を驚かせた。1年365日だから、約2年10ヵ月ぶり。館山はブランクをまるで感じさせない内容で9月30日までに6勝(3敗)をマークしている。

館山はいかにして蘇ったのか。直近の手術を担当した古島弘三医師(慶友整形外科病院スポーツ医学センター長)に話を聞いた。

「それは、もうひどい状態でした」

手術は2時間にも及んだという。

「ひじは骨と筋肉とじん帯で支えていますが、館山選手の場合、じん帯だけではなく、筋肉も断裂していました。手術で何度か同じところを開けているので、筋肉や筋膜など組織同士が癒着してしまっていた。しかも屈筋群は骨に付着する部位から完全にはがれており、私が知る中でも、これまでで最もひどいじん帯損傷のケースでした」

長期に及ぶリハビリを経ての復活劇。「館山選手のメンタル面の強さがものを言った」と古島医師は語る。

「3度の手術を経て復活できるのか。相当の絶望感があったと思いますよ。それでも何事にも前向きな館山選手は通常4週間で外すギプスをテープでカラフルにコーティングして、さらに2週間固定していました」

館山は3度のトミー・ジョン手術を含め、計7度の執刀手術を受けている。縫いも縫ったり151針。掛け値なしの「不死身の男」である。