難民問題は「カネ」で解決?
安倍総理よ、本当に「強いリーダー」であるならメルケルを見習ってくれないか

『週刊現代』官々愕々より
〔PHOTO〕gettyimages

難民と安倍とメルケルと

9月30日の国際連合における欧州の難民問題に関する会議の前日29日。安倍総理が国連総会で演説し、難民問題に対して、8億1000万ドル(972億円)の支援を行うと表明した。

今、シリアから流出した400万人の多くが欧州へ向かう。中でも圧倒的多数がドイツに向けて「大移動」しているのは、メルケル首相が難民受け入れに積極姿勢を貫いているからだ。年内のドイツへの難民申請は100万人を超えると言われる。最近では、同国の難民認定の処理能力は限界を超え、難民申請の制限が始まった。ドイツの今年の財政支出は、1兆円を超えるのではないかとも言われている。

それでも揺るがないメルケル首相の積極姿勢の裏には、人道的観点以外に2つの理由がある。

1つは、健全な財政と堅調な経済である。ドイツは、今年も黒字財政を維持し、失業率もユーロ圏平均の半分程度と優等生だ。財政相は、30万人までなら難民を受け入れても財政黒字は維持できると表明していた。

もう1つの理由が、大量の難民受け入れが、人手不足のドイツ経済にプラスだという確信である。難民がEUにたどり着くためには、かなりの現金と最新情報を入手する能力が必要だ。彼らは教育水準も高く、専門技能を持つ者も多い。それなら、労働力として活用するのも難しくない。難民受け入れは、単なる「慈善事業」ではなく、「成長戦略」のひとつなのだ。

さらに、重要なメリットがある。ドイツは今、世界中に「人道主義の国」、「希望の国」というイメージを広げることに成功しつつある。特に、中東諸国の間でのイメージ向上効果は大きく、これは、外交・安全保障上も極めて大きな意味を持つ。

一方の日本。安倍総理が、憲法9条を無視して、米国とともに世界中に自衛隊を派遣する安保法制を無理矢理成立させたのは、何よりも、日本の国際貢献は「カネだけ」ではないということを米国に見せたかったからではないのか。そのために、安倍総理は、国民に対して、「人を殺し、殺される覚悟」を求めている。それが、「強いリーダー」だと信じているのだろう。

しかし、'14年の難民申請5000人に対し、難民認定はたったの11人。他の先進国に比べて極端に少ない。すでに日本に対して、「カネだけじゃだめだ、難民を受け入れろ」という批判の声がある。しかし、安倍総理は、何故かここでは、「カネだけ」の貢献しか考えない。

もちろん、財政負担や、外国人が大量に入ったときの文化摩擦や治安悪化などへの懸念は理解できる。しかし、「積極的平和」という言葉を政策の柱に掲げ、「強いリーダー」を自任するのであれば、難民受け入れのために国民に力強く「説明して説得する」という姿勢が必要だ。その勇気も気概もないのだろうか。

ドイツでも難民受け入れへの懸念は高まるだろう。しかし、メルケル首相は、信念を持って、国民に呼びかけている。彼女が国民に求めているのは、「人を助ける覚悟」だ。

「人を殺し、殺される覚悟」を国民に求める安倍総理と「人を助ける覚悟」を求めるメルケル首相。どちらが崇高なリーダーなのか。

答えは、明白だ。

『週刊現代』2015年10月17日号より

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