脱税の温床? 芸能界の悪しき「ご祝儀」制度に切り込む
~あの大物プロデューサー逮捕で発覚

逮捕直前のロビー和田容疑者

氷山の一角だった

昭和歌謡界を彩った大物プロデューサーが、所属タレントのギャラを着服した容疑で逮捕された。芸能界の悪しき慣習である「ご祝儀」制度を利用して、私腹を肥やしていた容疑者。「芸能とカネ」の問題に、『国税記者』の著者・田中周紀氏が切り込む――。

自身が取締役を務める芸能プロダクション「SL-Company」(東京都渋谷区)に納めるべきタレントの出演料63万円を着服したとして、会社法違反(特別背任)の疑いで警視庁捜査2課に逮捕された音楽プロデューサー、ロビー和田こと和田良知容疑者(70)。

和田アキ子『笑って許して』、西城秀樹『傷だらけのローラ』などのヒットソングを輩出した男が、逮捕された経緯は、9月10日公開の記事で詳細に記した(「う~んマンダム」「傷だらけのローラ」を生み出した大物芸能プロデューサーの転落人生http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45226)。

さらに、和田容疑者は同月30日には同じ容疑で再逮捕され(金額は131万5千円)、SL社の損害額は合計194万5千円にのぼっている。

当初こそ容疑を否認していた和田容疑者。だが、現在では容疑を認めて「私的な飲食代や借金の返済に充てた」と供述している。東京地検は1回目の逮捕容疑の処分を保留した状態で、2回目と併せて10月下旬に起訴するものとみられる。

しかし、このSL社の損害額は「刑事事件」として立件できるものに限定されている。

関係者によると、和田容疑者がSL社の取締役を務めていた2010年の10月から13年12月までの3年2ヵ月の間に自分の懐に入れた、SL社所属のボーカルグループ「ル・ヴェルヴェッツ」の出演料は2800万円強にものぼる。立件された被害額は、ほんの氷山の一角に過ぎないのだ。

芸能界に古くからある「ご祝儀」という慣行を悪用して、会社や有望な若者を食い物にしていた和田容疑者。昭和の時代に一世を風靡した大物プロデューサーの犯罪の実態に迫る――。

松崎しげる『愛のメモリー』、松本伊代『センチメンタル・ジャーニー』……。和田容疑者は1970年代から80年代初めにかけてこうした大ヒット曲を次々とプロデュースし、90年にはバイオリニストの葉加瀬太郎を世に送り出した。

一般的な知名度こそ低いものの、華々しい過去を知る人たちを中心に、芸能界には今も一定の信奉者が存在する。

だが、ヒット曲を長らく産み出せないでいるうえに、和子(通称エミ)夫人が経営する東京・南麻布のセレブ御用達カフェ「ペーパームーン」の業績が00年代になって急降下。

ペーパームーンの運営会社「ピー・エムファクトリー」は09年8月に破産し、代表者のエミ夫人は自己破産した。最終的にはペーパームーンも13年7月末で閉店している。