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緊急インタビュー!仏学者エマニュエル・トッド「VW事件から見えてくる ドイツ最大の弱点」
~やっぱりドイツが世界をダメにする?

こうなることは、見えていた

「フォルクスワーゲンのスキャンダルについて、よく言われているのは、ドイツの技術力の評判が地に墜ちたのが問題だということでしょう。しかし、私はあまりそうだとは思いません。それよりも重要な問題があるように感じるのです」

エマニュエル・トッド氏、64歳〔PHOTO〕gettyimages

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書)が日本で10万部を超えるベストセラーになっている、フランス国立人口学研究所研究員のエマニュエル・トッド氏。いま世界で最もその発言に影響力がある一人とされるフランス人学者は、本誌の取材にこう語った。

ドイツ産業界を代表する名門企業であり、自動車業界の世界トップに君臨する「王」、フォルクスワーゲン。年間1000万台以上の自動車を売り、全世界で約60万人の従業員を雇用する巨大企業は、21世紀の成功企業のシンボルであった。

それが、米国での排ガス規制を逃れるために、同社の主力ディーゼル車に不正なソフトウェアを使用していたことが発覚したのが9月18日のこと。以降、次々と新たな問題が噴出し、一向に騒動が収まらない緊急モードに突入。世界中から褒めあげられた名声が一夜にして、底まで墜ちた。

誰もが想像すらしなかった異常事態だが、実はトッド氏はこのことを「予見」していたのだ。

「米国の陰謀論」を持ち出す

トッド氏といえば、1976年に発表した著書『最後の転落』で旧ソ連の崩壊を予測したことで有名。さらに、2002年には著書『帝国以後』で米国の没落を描くと、6年後に米国経済を根幹から揺るがすリーマン・ショックが勃発した。未来をピタリと言い当てる洞察力こそが、世界中の経営者や政治家、アカデミズムが「トッド信者」になる最大の理由である。

そんなトッド氏が最近警鐘を鳴らしていたのが、ドイツだった。近著では次のように「ドイツの危機」を指摘していた。

「私は悲観的だ。ドイツが望ましい方向に推移していく蓋然性は日々低下している。すでにきわめて低い水準にまで落ちている」

「ドイツの指導者たちが支配的立場に立つとき、彼らに固有の精神的不安定性を生み出す。

歴史的に確認できるとおり、支配的状況にあるとき、彼らは非常にしばしば、みんなにとって平和でリーズナブルな未来を構想することができなくなる」