牧野洋の「ジャーナリズムは死んだか」
2010年04月15日(木) 牧野 洋

第2回 トヨタ報道「日本的特ダネ」は
ジャーナリズムといえるのか?

LAタイムズは調査報道でピュリツァー賞の最終候補に

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 4月12日、ジャーナリストに対して与えられる最高の栄誉であるピュリツァー賞の発表があった。同賞の選考委員会は、トヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)をめぐる報道をリードしてきたロサンゼルス・タイムズ(LA)に言及し、たたえた。

「LAタイムズのケン・ベンシンガーとラルフ・バータビーディアン両記者は、トヨタ車のリコール問題で深堀した報道を続け、設計上の欠陥や交通安全局の体制不備を浮き彫りにした。両記者による報道があったからこそ、トヨタと安全局は必要な改善策を講じ、連邦議会はトヨタ問題の調査に乗り出したのである」

 LAタイムズによるトヨタ報道は、ピュリツァー賞の受賞を逸したものの、「全国ニュース」部門の最終選考(合計3作品)に残っていた。

 選考委員会は受賞作発表に際して、最終候補作も併せて発表する。各紙が激しく競い合っていたトヨタ報道については、LAタイムズに最高の評価を与えたわけだ。

 日本では、底無しの状況を見せていた「トヨタたたき」について政治的な陰謀を唱える向きもあった。しかし、仮にLAタイムズが「政治的な陰謀」に加担していたら、同紙によるトヨタ報道は最終選考に残らなかっただろう。選考委員会はピュリツァー賞の権威を守るために、「偏向報道」の色合いが少しでもある作品を排除しようとするからだ。

 前回のコラム(『トヨタ問題をリードしたLAタイムズの「調査報道」』2010年4月8日公開)でも書いたが、LAタイムズは調査報道の手法を採用してトヨタ問題に切り込んだ。ワシントン・ポストによる「ウォーターゲート事件」の特報が象徴するように、調査報道は独自取材の積み重ねによって権力の暗部を暴き出す武器になる。

 ピュリツァー賞の選考委員会も、トヨタ側の発表をうのみにせずに独自取材を続けたLAタイムズの報道姿勢を評価した。

 日本のメディアはどうだったか。トヨタは日本を代表するグローバル企業であるだけに、日本の大新聞もやはりしのぎを削ってトヨタ報道を展開していた。年明け以降、日米同時進行で連日のようにトヨタ問題が主要紙の1面をにぎわしていた。

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