俳優・ラジオパーソナリティ 大竹まことさんが選ぶ「わが人生最高の10冊」
伝わりづらいものの余韻って、いいよね
俳優・ラジオパーソナリティの大竹まことさん

「ダメ」というのは、実は大事なこと

本はタイトルのカッコよさで選んじゃったりすることがあって。若いころは、高橋和巳の『邪宗門』や大江健三郎の『見るまえに跳べ』なんかを読んでいたのを思い出し、今回引っ張り出しはしたんだけど、まあ、まるで何も覚えていない(笑)。

一時流行っていたバロウズの『裸のランチ』とか、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』も、何度挑戦し、途中で投げてきたことか。「俺もうバカをさらしていいや」って開き直りました(笑)。

1位の『ぼくらの民主主義なんだぜ』は、高橋源一郎さんの時事エッセイ集です。印象深かったのが29ページ。宮崎駿さんがトトロのエプロン姿でもって、近所でデモをしたという。宮崎さんの後ろから、犬を引き、傘を手にしたスタッフが二人ついてくる。高橋さんは、3人が写ったその写真をさして「柔らかい」というんだね。

〈「柔らかさ」があるとは、いろんな意味にとれるということだ。ぼくたちは、このたった1枚の写真から、「反原発」への強い意志も、そういう姿勢は孤独に見えるよという意味も、どんなメッセージも日常から離れてはいけないよという示唆も、でも社会的メッセージを出すって客観的に見ると滑稽だよねという溜め息も、同時に感じることができる〉と書いてある。

俺もね、自分が「お笑い」をやっているのは、高橋さんが言うように、「伝わりづらいものを人に伝えたいからなんだ」と納得させられた。「笑い」は、笑うことで解消されて、結果何も伝わらないこともある。でも、まれに「アイツ、こんなこと言ってたな」と微かな余韻として伝えたいものが残っていくこともある。この仕事をやっててよかったと思うのはそういうときだよね。

高橋さんの本はよく読みますよ。このひとダメな人なんだよね、何度も結婚したり(笑)。でも、「ダメ」というのは、実は大事なことで、自分のダメさ加減を知ってモノを言うのがいいんだよね。

次の『僕といっしよ』は、「行け! 稲中卓球部」の作者・古谷実のギャグ漫画です。これは泣くよ! 養父に捨てられた兄弟(14歳と9歳)と、シンナーやっていた「イトキン」が出遭い、見ず知らずの床屋の親父に拾われ、一緒に暮らしはじめる。

バカバカしい話なんだけど、2巻の中ほどでイトキンがね、「オレ最近シンナーやってない」と気づく場面があるんだよ。「ついこの間まで独りぼっちだったけど、今は幸せだ!!」と叫ぶんだ。

すごい形相のアップやエロやブラックな笑いがあるなかで、出てくる女が、もうハッとするくらい奇麗だったりするんだよね。すごいよ。読んだのは20年以上前かなぁ、息子が中学生くらいのとき薦められたんだよね。子供が面白いというのがどんなものかと思って読んだんだけどさ。ふだん漫画はそんなに読まない。記憶にあるのは、貸本屋にあった白土三平の『カムイ伝』くらいかな。