ルポ・「密航ブローカー」
iphone6から風俗嬢まで。中国本土と香港を1万5000円で結ぶ手業師たち

今年6月、香港・銅鑼湾の性風俗店にガサ入れが入り、中国から密航した女性従業員が大量検挙されたことを報じる現地紙『蘋果日報』web版の記事の一部を抜粋

費用はたったの「1万5000円」

香港に密航する中国人が目立っている。近年は香港で先行発売されたiPhone6が転売業者によって密輸・密航される事件が多発するなど、そのハードルはあまりにも低い。その裏で栄えるのが、いわゆる「蛇頭ビジネス」を行う密航ブローカーたちだ。その実態を、中国事情に詳しいノンフィクションライター・安田峰俊氏が追った。

今年9月10日、広東省深圳(シンセン、以下深セン)市西部の港・福永埠頭付近において、男女11人が香港への密航容疑を理由に逮捕される事件があった。

逮捕者の内訳は密航ブローカー(蛇頭)の男1人と、不法就労を目的とした密航希望者(人蛇)の男6人と女4人で、最年少は17歳の少年。一人当たり6000元(約11万円)を蛇頭に払い、香港での不法就労を目論んでいたらしい。

現地紙『南方都市報』によれば、今年に入ってからだけでも24件の香港密航行為が露見し、逮捕者は117人にのぼるという。

香港は1997年にイギリスから中国に主権を返還されたが、現在もなお一国二制度のもとで旧国境地帯には鉄条網の仕切りが設けられ、他の国境地帯と同様の厳しい警備体制が敷かれている。

もっとも、近年は港中(香港・中国)経済の一体化が進み、いまや中国人は地方の農村出身者でも簡単に港澳通行証(香港・マカオ地区渡航専用のパスポート)を取得できる時代だ。香港を訪れる中国人は年間4700万人(推計)にのぼり、同じく中国人移民も年間3.85万人のペースで増えている。

つまり、本来はわざわざ密航しなくても普通の手続きを踏むだけで入境できるはずの場所なのだが、そこはカオスの国・中国。何らかの「わけあり」の事情から当局に自分の足取りを捕捉されたくない人もそれなりの数存在する。

結果、彼らの需要に応える形で横行し続けているのが、密航ブローカー――。いわゆる「蛇頭ビジネス」だ。