『半沢直樹』『ドクターX』の大ヒットに続け!
新ドラマ『遺産争族』は対立劇の流行を引き継げるか

青春、恋愛、対立劇……次の潮流は?
TBSチャンネルHPより

友人・仲間との青春を謳歌した70年代

「歌は世につれ世は歌につれ」と言うが、ドラマも時代を写す鏡。時代に合っていないと当たらない。はっきりとそう言う制作者も少なくない。

たとえば、1983年から85年まで計3作が制作され、いずれも大ヒットした連続ドラマ『金曜日の妻たちへシリーズ』(TBS)の飯島敏宏プロデューサー(83)も「時流に乗せようとして作ったものが、時流に乗ったのです」と振り返っている(『70年代と80年代 テレビが輝いていた時代』TBS「調査情報」市川哲夫編/毎日新聞出版)。

この本を編んだ市川氏は元TBSのドラマプロデューサーで、「ドラマはジャーナリズム」という持論を持つ。時代や世相と乖離した作品は見る側に支持されないということだ。

『金妻』の場合、脚本を書いた鎌田敏夫さん(78)の時代を見る目が、この物語の方向性を決めた。『金妻』で描かれたのは当時の30~40代前半の夫婦たちだが、あの時代における30~40代前半は家族よりも友人、友情、仲間の存在が気になると鎌田さんは考察した。

また、家族である夫や妻が絶対的存在ではないこともあって、同時に2人の異性を好きになることも出来ると鎌田さんは考えた。この見立てにより、複数の家族が夫婦同士で交流し、やがて恋愛関係にまでおよんでしまう物語が生まれ、大いに共感される。短く言い表すと「不倫ドラマ」なのだが、周到に計算されていた作品だった。

『金妻』の主な登場人物たちが生まれたのは45年の終戦の前後から50年代半ばごろ。そのころ生まれた世代は幼いころから大家族制は崩れており、おじいちゃんとおばあちゃんは家の中に存在せず、きょうだいも少なくなっていた。その分、友人の存在が大きくなったらしい。人間の本質はほぼ不変に違いないが、価値観や考え方は周囲の環境によって変わるものだろう。

岡林信康(69)の『友よ』がヒットしたのは、この世代が青春期を迎えた68年。72年には森田健作・現千葉県知事(66)が歌った『友達よ泣くんじゃない』がオリコンのチャートで2位に。74年には学園ドラマ『われら青春!』の劇中歌『青春貴族』(中村雅俊)も流行した。

『青春貴族』の歌詞の冒頭は、♪いちばん大事なものは 何? 決まっているよ 友達さ――と歌われている。家族が一番ではないのだ。親孝行の大切さを強く説いた戦前の教えとは明らかに違った。

『金妻』の第1作の中では、いしだあゆみ(67)が夫役の古谷一行(71)に対し、「いつまでも、みんな(友人や仲間たち)と離れたくないの」と訴え、涙ぐむ場面もあった。家族が一番だった戦前派は「なにを言ってるんだ?」と鼻白んだに違いない。だが、『金妻』世代は「分かる」と共感したのだろう。