優勝ヤクルト四番・畠山和洋 
遊び好きの元「不良選手」が打点王になるまで

【プロ野球特別読み物】

ここ一番で頼りになる男とは、品行方正とは限らない。野球をしながら酒に溺れ、博打に夢中になるその度胸も、勝負事に役立つことがある。初の打点王が確実な、かつての「不良選手」のいまに迫る。

漫画の『あぶさん』みたい

スイング同様、若い頃の私生活は豪快だった〔PHOTO〕wikipedia

ちょっぴり突き出たお腹が、Tシャツを膨らませていた。優勝争いを続ける9月下旬。ヤクルトの主砲・畠山和洋(33歳)は試合開始4時間以上前には、すでに神宮球場の室内練習場にいた。ニックネームの「Boo(ブー)」と縫いこまれたバッティンググローブをはめ、コーチが投げる山なりの緩いボールに対峙する。かつて三冠王を3度獲得した、落合博満(中日GM)が取り入れていた練習法だ。

3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーを達成した山田哲人のようなスマートさはない。左足を高々とあげ、「フンッ」とうなりながら全力で振る。最近にはいないタイプの野球選手だ。

「残り試合がわずかでこの位置で優勝争いするのは初めてですが、ワクワクすることはあっても、寝られないことはない。僕らは戦力十分の巨人、阪神に立ち向かう挑戦者の立場。このダンゴ状態から最後に頭ひとつ抜け出す、というのは、願ってもない展開ですよ」

ヤクルトは残り7試合で2位・巨人に2ゲーム差をつけ(24日現在)、14年ぶりのリーグ優勝を目指す。開幕直後の4月、主砲・バレンティンが1試合出場しただけで負傷離脱。5月以降は畠山が四番に定着した。プロ15年目で初めて100打点を突破し、初の打点王も見えてきた。一軍打撃コーチの杉村繁が言う。

「バレンティンが抜けて自分が四番として長打を打たなければいけない、という気持ちが強くなった。畠山はある程度、予測で打つバッターだから三振の数は多くなってしまうけど、三振についてはとやかく言わない。首脳陣が求めているのは長打だし、十分な成績を残してくれているよ」

畠山は場面ごとに相手投手の心理を考え、狙い球を絞るタイプのバッターだ。大事な場面になるほど頭をめぐらせ、最後は「丁か半か」の心構えで打席に向かう。狙い通りのボールが来れば長打になるし、狙いが外れれば、空振りになる脆さもある。そのリスクを承知で豪快に振ることが、相手投手にとって脅威となるのだ。

今季から一軍で一緒に戦う野村克則バッテリーコーチが、畠山のことをこうたとえた。

「読みがいいし、いい意味の博打うち。なんか、昭和の匂いを漂わせている。漫画の『あぶさん』みたいですよね」