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常総大水害から1ヵ月 
極限状態で自衛隊ヘリが救助した「2匹の犬と50代夫婦」を訪問

初めて犬の名前を明かす
〔PHOTO〕gettyimages

ワンちゃんもご夫婦も助かって本当によかった、と喜んだ人がいる一方で、人命第一の中、犬も一緒に救助するのはいかがなものか、と言う人もいる。賛否両論を呼んだ救出劇の「主人公」を訪ねた。

現場は一面の茶色い泥土

鬼怒川から溢れ出た濁流がすぐ目の前に迫る中、2匹の柴犬を抱えたまま屋根の上に取り残された夫婦。救助に駆けつけた自衛隊により、犬と一緒にヘリコプターへ吊り上げられていく。この決死の救出劇は日本中の注目を浴びた。

あれから2週間。被災地の報道は日に日に少なくなっていくが、あの2匹の犬と夫婦は、今どこで、どんな生活をしているのだろうか—。それを確かめるため、本誌は被災地へと向かった。

まずは、激流に呑まれた現場へと足を運んだ。夫婦の自宅は、鬼怒川の決壊場所から約100mの距離にあった。すでに水は大部分が引いて、辺り一面、茶色い泥土がむき出しとなっている。

かつて田んぼや畑だったところには、流されてきた道路のアスファルトや家屋の木材などが瓦礫となって散乱し、水没した車が点在している。そんな惨状の中、唯一流されなかった白い家(ヘーベルハウス)に引っかかっているのが、夫婦の自宅の二階部分だ。あの日、その屋根の上で夫婦は犬を抱えながら、必死に救助を待っていた。その不安と恐怖はいかばかりだっただろう。

結局、現場では何も手がかりを見つけることができず、次に夫婦が救助された直後に身を寄せたという避難所(石下総合体育館)を訪ねた。

体育館には段ボールが敷かれ、20人ほどの人が休んでいたが、皆、慣れない避難所生活のためか、疲れた表情を浮かべている。あの夫婦の行方を尋ねてみた。

「ああ、羽鳥さん夫婦のことだね。確かにここに避難していたよ。2匹の犬も一緒だった。でも今は姿が見えないから、もしかしたら、すでに避難所を出たのかもしれないね」(避難している住民)