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フォルクスワーゲン「排ガス不正問題」 
背景にトヨタ「プリウス」に対する過剰なライバル意識

不正発見者・自動車評論家・ジャーナリストらが語る
「何が起こっているのかわからない」。ヴィンターコーン会長は不正への関与を否定した〔PHOTO〕gettyimages

どんな自動車も事故や環境汚染を生む。人命に関係するビジネスだから、メーカーには厳しい法令順守やリスク管理が求められる。それを、トップ企業が破った。今世紀最大かつ最悪の自動車事件だ。

ドイツ人が「屈辱的だ」と

「ドイツではもう大騒ぎです。最近は欧州に押し寄せる難民問題のニュースばかりでしたが、フォルクスワーゲンの問題が発覚して以降、この話題がトップニュースです。ドイツでは就労人口の7人に1人が自動車産業に従事しています。その最大手企業が不正を働いたのですから、『大変なことになってしまった』と国民全体が頭を抱えているのです」(ドイツ在住の作家・川口マーン惠美氏)

年間売上高2260億ドル(約27兆円)。
全世界に抱える従業員数60万人。
世界販売台数1014万台(2014年)。

自動車業界で「カー・ジャイアント」の名をほしいままにしてきた、世界トップ企業の独フォルクスワーゲン。

その巨象が足元から崩れ落ちようとしている。

川口氏が続ける。

「テレビのコメンテーターたちもヒステリックにこの問題を取り上げています。9月22日のニュース番組ではコメンテーターがこう言っていました。

『ドイツの自動車産業が強いのは安いからではない。品質が良いからだったのだ。それを世界中の人々が認めていたのだ。その名声がフォルクスワーゲンの不正で傷つけられてしまった。これは取り返しのつかないことだ』

そしてこうも言っていました。

『今回の不祥事で喜ぶのは他国の車メーカーですよ。例えばトヨタだ』

ドイツ人にとって、フォルクス(=国民)ワーゲン(=車)は書いて字の如く『国民車』です。その意味で今回の不祥事はドイツ人全体にとって屈辱的なものなのです」