ディープラーニングはどのようにして生まれたのか? 低予算で自主的な研究グループによって育まれた世界最先端のAI技術
〔PHOTO〕iStock by gettyimages

自動運転車やディープラーニングなど、第3次AIブームが世界的に勢いを増している。これら人工知能はどう実現され、そして世に出てきたのか? 今回のコラムではその開発から商用化へと至る経緯を詳しく紹介したい。

その理由は今後、日本でもディープラーニングのように画期的なAI技術を官民あげて自主開発しようとする動きが起きる公算が高く、その際の参考材料として欲しいからだ。

学際的な研究グループの結成

現在、日本でもブームを巻き起こしている「ディープラーニング」あるいは「ディープ・ニューラルネット」などと呼ばれる先端技術は、伝統的なAI(人工知能)である「ニューラルネット」の最新モデルだ。

1950年代に米国で研究開発が始まったニューラルネットは、「人間の脳の仕組みを(極めて単純化した形ではあるが)模倣したAI」として長らく期待を集めてきたが、いつまで経っても実用化の目途が立たなかった。

そのためAI研究者の大半は匙を投げてしまったが、1970年代から80年代にかけてニューラルネットの研究に着手していたカナダ・トロント大学教授のジェフリー・ヒントン氏や米ニューヨーク大学のヤン・ルカン氏ら、ごく一部の科学者は粘り強くニューラルネットの研究を続行した。

特に1980年代には「Back Propagation(誤差の逆伝搬)」と呼ばれる、ネットワークのチューニング技術が開発され、これによってニューラルネットが再び勢いづくかと思われた時期もあった。が、当時のコンピュータの処理能力の限界や(システムが学習するために必要な)データ量の不足などによって商用化までには至らず、結局は学界における研究テーマに止まった。

潮目が変わったのは21世紀に入ってからである。2004年、ヒントン氏は「Canadian Institute for Advanced Research (CIFER)」という研究支援財団から得た少額の資金を基に、国際的かつ学際的な研究グループを立ち上げた。

この研究グループには世界各国から、コンピュータ科学、脳科学、心理学、認知科学、物理学など、様々な科学領域の第一線で活躍する研究者達が招かれた。彼らは各々の専門知識を持ち寄って、停滞していたニューラルネット研究にブレークスルーをもたらそうとした。