【リレー読書日記・大林宣彦】
「戦後70年」のリアリティを体感できる3冊

戦争画とニッポン、白菊、図録原爆の絵
〔PHOTO〕gettyimages

「戦後七十年」のリアリティ

本を読む、――のは好きだが、1冊の本を手許に置いて、その一頁一頁を時に捲りながら、いろいろ考えたり物思いに耽ったりして時を過ごすのが、僕は好きだ。

そんなわけで、この3ヵ月ばかり僕の居間の小机の上に乗っけられたままで、その周囲を動き廻るこの僕を、じっと見詰めている書物がある。その1冊は、題名を『戦争画とニッポン』という。

今回は次第に存在感を重たくしていくその本を横目で見つつ、の雑感である。いまテレヴィでは、「国会中継」でこの国の行方について与党と野党が激しくやり合っている。

この本の著者・美術批評家の椹木野衣さんは、その冒頭をこう語り始める。

「戦後七十年の年に、日本の戦争画ともう一度、向き合いたかった。(略)『戦争』は、自分の批評にとって秘密の入口としてあった」

そして「日本の戦争画と新たに向き合うにあたって(略)ぜひ、『絵描き』の方と仕事をしてみたかった」。そこで「共著者として指名された」のが、「絵描き」であり「現代美術家と名乗ったりも」する会田誠さん。

「二十年近く前に『戦争画RETURNS』シリーズというものを作」っていて、「それがあって」今回の“批評家と作家の共著書”なるユニークな書物の誕生となった。「戦後七十年」のリアリティーがここに凝縮されて、まことに重たい。

椹木さんの「戦後の太平の世に生まれた会田さんの中から、戦争というものが出てきた背景」について問われた実作者の会田さんは、「太平洋戦争全体に漂っている『暗い叙情』みたいなもの」をキーワードに挙げ、戦争を紡いだ書物などから受けた影響を「少年時代にあの暗さの魅力に軽く取り憑かれていたから、後々、こうして、太平洋戦争を題材にするようになった気がします」、と告白し、さらには「これから再びあのような時代になったら、自分は戦争画を描くだろうか?」、と痛切に己に問いかける。

そしてこの書物はまさに「あのような時代」の真っ只中で「陸軍派遣画家」として戦地に赴き、数かずの名作・戦争画を残した藤田嗣治や宮本三郎ら日本画壇の重鎮たちによる大層勇ましい「南方戦線座談会」など貴重な史料を再録。

編者の椹木さんは「引き受けた以上は、与えられた仕事に懸命に向き合った」彼らの画業が「後から振り返られたとき」、それが「文明史上の犯罪への加担であったなどとは、夢にも思わなかっただろう」。そして「私たちはいま、いったいどこにいるのだろう」、と「70年目」の正体を焙り出そうと試みる。