大阪府警・暴力担当刑事の捜査ファイル
山口組・高山清司若頭の裁判秘録を公開する!(後篇)

暴力団の資金源を断て!

上田は最初仲よくしようとしていたが、相次ぐ恐喝に耐えきれずに警察に駆け込んだ、という見方もできなくはない。その実、第三者がこうした会食や出会い方を見た場合、脅されているようには見えない。そのあたり密室の事情は微妙であり、当事者にしかわからないのである。

換言すれば、今度の事件を立件する難しさは、暴力団と企業の経営者やオーナーが密接につながり、日本の経済界が裏社会と一体となって発展してきたことの裏返しでもあるのだろう。検察側の論告求刑では、こうも述べられていた。

「上田が別の業者のかかわる仕事の件で東原と会ったところ、東原が上田に対し『藤兵衛さん、うちに来いひんから、こんなことになったんや。うちに来て仕事してカネ持ってこい。談合もせえ。組合もあるから組合に入り、上納金を持ってこい』などと言った。

(中略)上田は京都で仕事をするときには会津小鉄会の関係者に一定のお金を持っていけば暴力団には介入されないという京都ルールを改めて確認してもらえば、弘道会、淡海一家から要求されている企業舎弟にならずとも済むと考え……」

つまるところ会津小鉄会と弘道会・淡海一家の違いこそあれ、建設業者にとってはみかじめ料をどこの暴力団組織に収めるか、という争いともいえる。祝井が話す。

「暴対法ができて二十年以上経っているのに、こんな世界が露骨にまかり通っている。事件を見て、改めてそこに憤りを感じます」

いまだ断ち切れずに生き続ける暴力団と企業の蜜月。捜査でそれを身に染みて感じてきたはずの元ベテランマル暴刑事の祝井十吾も、ショックの色を隠せなかった。

暴力団の資金源を断つ─。山口組壊滅作戦をはじめ、取り締まる側の警察当局は、常にそう言い続けてきた。その一方で、建設・土建業界と暴力団社会のもたれ合いという古典的な関係でさえいまだ続いている。

実際は企業と暴力団の関係を完全に断ち切ることは難しい。図らずも、京都を舞台にした山口組最高幹部による恐喝事件は、それを如実に物語っているのかもしれない。