大阪府警・暴力担当刑事の捜査ファイル
山口組・高山清司若頭の裁判秘録を公開する!(後篇)

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極道裁判を見る難しさ

(前篇より)山口組の高山清司若頭の裁判について、元大阪府警マル暴担当の祝井十吾は「この裁判は難しい」と漏らした。事件の行方は判決を待つしかないが、対暴力団捜査がいかに困難をともなうものか、この裁判が示している。

「どう考えても上田の物語は、10月3日の嵐山『吉兆』における会食と整合しない。上田の語るところによれば、上田は脅されている真っ最中に脅しの張本人と会食することになってしまったことになる。衝撃的な出来事だったはずである。ところが、上田はそのような衝撃的な出来事を捜査段階では供述していなかった」

上田の証言によれば、この吉兆会談は、山口組ナンバースリーである総本部長の入江禎に高山(本来の漢字は「はしごだか」)との仲裁を頼んだあと、謝礼として一千万円を支払ったときのことだとされる。

実はこのとき恐喝の実行犯サイドである淡海一家の高山義友希も同席していた。だが、上田はそれを取り調べ段階で供述していない。そこも弁護側に突かれたのである。そこで弁護側はこのときの入江の役割について、山口組若頭の高山と上田との仲裁ではなく、上田と高山義友希との関係づくりに一役買ったのだと主張した。

「入江の口利きで義友希に面倒を見てもらうことになったことから、口利きをした入江、面倒を見ることになる義友希、面倒を見てもらう上田が会食をした。そう考えるほうがはるかに自然で合理的である」

もとより弁護団は、山口組若頭の高山と淡海一家の共謀関係を否認している。したがってこのような主張をするのは、検察側にとっても予想の範囲内ではあるだろう。しかし、同じ捜査側に立つ祝井もまた、同じように一連の出来事についての不自然さを指摘する。

「論告求刑にも書いているけど、このあと上田は弘道会の高山や淡海(一家)の義友希と『ラポー』というレストランで鉢合わせし、彼らの飲食代を支払っています。そこから、次にたん熊で会い、『仕事も力を合わせてよろしく頼む』と高山から言葉をかけられたと上田は供述しています。

山口組若頭ともなれば、会席におるだけで効果がある。『仕事を頼む』なんてわざとらしく言うんもしっくりきません。恐喝されている被害者が、これだけ頻繁に当事者と会っている。弁護側はそこを見逃さず、その理由はみずから望んで会っていたからだ、と突いてきている。この事件が単純な恐喝としてすっきりせん難しさは、そこらあたりから来ているのでしょうな」

その反面、こうも話す。

「極道の事件ですから、いわずもがなの部分もある。それをどこまで裁判所が汲んでくれるか。上意下達の極道の世界では、実際に親分の眼が動いたというだけで相手を殺したりしてます。だから一般の恐喝事件より立証のハードルは低い。それらをどう判断するか、でしょうな」