大阪府警・暴力担当刑事の捜査ファイル
山口組・高山清司若頭の裁判秘録を公開する!(前篇)

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大法廷に現れた若頭

ノンフィクション作家・森功氏の新著『大阪府警暴力団担当刑事 捜査秘録を開封する』の売れ行きが好調だ。島田紳助引退事件の真相から、暴力団のカネの流れまでを書いた本作から、山口組若頭の裁判を扱った終章を特別公開!

京都市中京区の丸太町通にある京都地方裁判所は、二〇〇一(平成十三)年十一月に完成した二十一世紀の建物だが、東京地裁や東京高裁がある霞が関の合同庁舎など他の地域の無味乾燥な裁判所とは異なる独特の趣がある。北玄関の真向かいに京都御苑を望む。

パソコンで検索すると、庁舎の建設工事中には、古墳時代や飛鳥時代の土師器(はじき)や須恵器(すえき)が発掘され、それが市の考古資料館に所蔵されている、とホームページに紹介されていた。裁判所の敷地は、平安京の一部だったそうだ。

実際、古都の中心に位置している京都地裁を訪ねると、古代の風情を感じる。北玄関から庁舎に入ると、広いホールには、昔日の裁判に使われていたという版木でつくられた期日呼出状などが展示されていた。

そんな京都地裁一階にある一〇一号大法廷で、優美な古都の風情とは縁のなさそうな裁判が開かれてきた。山口組若頭の高山清司(高は、本来は「はしごだか」)が恐喝罪に問われた刑事事件の公判である。

そしてて二〇一二(平成二十四)年十一月十二日、京都地検による論告求刑がおこなわれた。一〇(平成二十二)年十一月十八日に京都府警が摘発してからおよそ二年、日本の暴力団社会に君臨する山口組ナンバーツーの裁判が大詰めを迎えて報道陣が殺到し、百人近く入れる大法廷の傍聴席の半数がマスコミ関係者で埋まっていた。

開廷時刻である午前十時少し前、被告人の高山が姿を見せた。病気療養などを理由に保釈が許された高山は、首に分厚いコルセットを巻き、杖をついている。静まりかえった法廷をゆっくりとした重々しい足取りで一歩一歩進み、被告人席へ腰を下ろした。

開廷宣告に続いて検察側の申請した証拠の採否を決め、裁判長の小倉哲浩が傍聴席を見渡しながら、告げた。

「それでは以上ですべての証拠調べを終わることとします。(本日は)検察官の論告ということでよろしいですね」

高山清司に対する論告求刑は、いわば山口組若頭という日本の暴力団社会のトップに対する京都府警や京都地検の最終的な結論といえる。元大阪府警捜査四課のベテランマル暴刑事、祝井十吾にとっても、非常に関心の高い出来事だ。ただし、祝井はその論告求刑の中身に触れると、予想外の言葉を発した。

「これは難しいかも……、どうも引っかかりますな」