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フォルクスワーゲンで何があったのか? 排ガス「不正」の背後に見え隠れする熾烈な権力闘争
ドイツ全土が揺れている
23日、本社にて社長の辞任を発表する経営陣 〔PHOTO〕gettyimages

「クリーン・ディーゼル」の嘘

9月19日、フランクフルトのモーターショーの宴もたけなわな頃、フォルクスワーゲン(VW)社の排ガス試験の不正が報道され、以来、ドイツでは爆弾が落ちたような騒ぎになっている。

問題となっているのはVW社のディーゼルエンジン車で、アメリカの環境保護局が不正を摘発した。

このニュースが巷に流されたのが土曜日であったことは、おそらく偶然ではない。株式市場の大混乱を防ぐ目的があったはずだ。

とはいえ21日の月曜日、混乱は十分に起こった。フランクフルトの株式市場が開いた途端、VW社の株価は下がり続け、その日の終値は17%のマイナス。そして、翌22日はさらにまた17%下がった。しかも、株価が転がり落ちたのはVWだけでなく、メルセデスやアウディ、そしてコンチネンタルといった関連会社も同様だ。

VW社が自ら認めた不正の中身というのは、ものすごくハイテクだ。なんと、排ガスの検査の時だけ、窒素化合物などが少なくなるソフトウェアが埋め込んであったらしい。

アメリカの環境保護局によれば、普通の走行時は、基準値の10倍から40倍もの有毒物質が排出されるという。よりによってVWは「クリーン・ディーゼル」と銘打って、これらの車種を大々的に宣伝していた。

このソフトが埋め込んであるのは、2009年から15年までにアメリカで販売されたゴルフなど48万2000台のディーゼル車で、制裁金は1台につき37,500ドルとして、単純計算で、合計約180億ドル。

しかし、火曜日のニュースでは、不正ソフト搭載の車が販売されたのはアメリカだけでなく、全世界で1100万台に上ると報道された。そういえばドイツの環境保護団体もすでに長い間、排ガス成分の公表値と実際の測量値が一致しないケースを訴えていた。

Golf TDI Diesel のエミッション・テスト 〔PHOTO〕gettyimages

なお今回の不正は、単なる数値の粉飾とは違い、環境、ひいては人の健康に害を及ぼすことを承知の上での犯罪だと見なされる可能性が大で、そうなればアメリカでの刑事訴追も免れない。もちろん、すべての車がリコールされ、無償で改善されなければならないので、その経費も莫大だ。

しかし、何といっても一番の出費は、これから始まるであろう集団訴訟。最悪の場合、VWは国に救済してもらわなければならなくなるかもしれない。

偶然のことながら、つい最近、日本で自動車関係の本の編集者と会ったとき、VWが良いという話になった。よく走るし、コンパクトだが高級感もある。比較的、値段も安い。これぞドイツの底力。日本の自動車メーカーも頑張らなければ、というような話だった。

ドイツの私の友人が、今、問題になっているディーゼルのゴルフに乗っていて、数年前まではこの車でよく遠出をした。運転するのはいつも私。ドイツを縦断してバルト海へも行ったし、アルプスを超えてイタリアにも行った。

だから私は、この車のことは十分に知っているつもりだ。フロント操作のわかり易さ、運転のしやすさ、馬力、燃費、座り心地の良さ、静かさ、そして、小ぶりなのにゆったりとしていて、何時間運転しても疲れない……etc。

ただ、前述の編集者の話では、売り上げはトヨタに匹敵するのに(2014年はトヨタが売り上げ世界一、わずかの差でVWが2位)、利益率がトヨタよりずっと低いそうだ。利益はいったいどこへ消えているのか?

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