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涙も出るけど勇気も出る!
25歳女性起業家の号泣戦記

【プロローグ公開】山口絵理子『裸でも生きる』
バングラデシュの朝日〔photo〕gettyimages

イジメ、非行…居場所がなかった青春。そして偏差値40からの一流大学への挑戦。大学を卒業し、本当の現場を見たいと渡ったアジア最貧国。腐敗にまみれた国で見つけた眠る素材、出会う人々。やがてバッグ造りで起業を決意。数々の失敗、挫折、裏切りに遭いながらも歩みを続け、途上国発ブランド「マザーハウス」を軌道に乗せる……。

大注目の女性起業家・山口絵理子さんが書いた、明日へ向かう力に溢れたノンフィクション『裸でも生きる 25歳女性起業家の号泣戦記』。待望の文庫化を記念してプロローグを特別公開します。



プロローグ

2004年4月7日、深夜23時。私はバングラデシュ・ジア空港に到着した。

ここはアジア最貧国。

政治汚職度ランキング・世界ワースト1位の国。

人口の約40パーセントは、いまでも1日1ドル以下で生活している。

鼻を刺すような異様な臭いに驚きながら、ボロボロのトランクを引っ張り、ゲートの外に出る。

「!」

私はものすごい数の群衆に一気に囲まれた。彼らはみな、何かを叫んでいる。

(マネー?)

恐怖心で彼らを直視できなかった。

一瞬、裸の赤ん坊を抱いた女性や、足を引きずっている老人、そして裸足の小さな少女たちが、私に向かって何かを訴えるような目をしているのが見えた。

空港に到着してまだ数十分なのに、すでに私は、

「帰りたい……!」

と、衝動的に思った。

ものすごい勢いで彼らを振りほどき、リキシャ(自転車で引っ張る人力車)をつかまえた。

リキシャに乗り込んでからも、空港の群衆が「マネー! マネー!」と叫ぶ声が、頭のなかで繰り返され、予約していたボナニ(首都ダッカにある地区)のゲストハウスに着くまでも、胸がドキドキしっぱなしだった。

リキシャ引きもチラチラと私を見る。何かを狙っているような目つきが月明かり越しに見える。

(無事にゲストハウスに着きますように!)