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「再発がん」からの生還
【特別インタビュー】なかにし礼

食道がんを克服して3年、再び病魔との闘いに挑む

「ついに来たか」—。食道がんを克服した'12年から、心のどこかで覚悟し続けてきた再発の二文字。4時間超の大手術と抗がん剤、そして陽子線。半年を超えるがんとの2度目の対決を、本人が語る。

陽子線治療ができない

2度目の「がん」が発見されたのは、今年の2月5日のこと。'12年に、ステージⅢの食道がんを陽子線治療で克服してから、約2年半が過ぎた頃でした。

前回のがん治療の後、私は3ヵ月に一度のペースで定期検診を受けてきました。1月下旬に受けた検査で異常が見つかったため、改めて精密検査を受けたところ、食道横のリンパ節にがんが見つかった、というわけです。

一度がんを患った身としては、「いつかはこういう事態に直面するのではないか」という漠然とした不安がずっと頭の片隅にありましたから、PET-CTの画像で鮮やかなピンクレッドに染まった患部を見せられた時には、「ついに来たか」という心境でした。

がんという大きな魔の山は、一歩足を踏み入れたら容易には抜け出せません。しかも上り詰めて、「征服した」と思っていても、さっと風が吹くや否や、目の前に新たな頂が迫ってくることが少なからずある。

がんというヤツは外から移ってくるのではなく、自分の体内から生まれてくる悪性の腫瘍ですから、「やっつけた」と思っても、いつまたその姿を現すか分からない。そういう油断のならない存在です。

直木賞作家のなかにし礼さんは、'12年に陽子線治療で食道がんを克服、その経過を記した『生きる力』が大きな反響を呼んだ。

同書のおかげで陽子線治療そのものも脚光を浴び、いまでは何ヵ月も予約待ちの病院もあるという。

今回、見つかったがんは初期のものだったので、なかにしさんは再び、陽子線による治療を希望していた。

ところが、旧知の担当医から告げられた答えは「ノー」でした。

「今回のがんは確かに早期のがんです。しかし、問題のリンパ節は、前回の食道がんの治療の際に30回も陽子線を当てた場所なんです。そこにさらに陽子線を当ててしまうと過剰照射になってしまい、他の器官を傷つけることになりかねない。ですから、今回は陽子線治療ができないのです」