スゴ本の広場
2015年09月29日(火) ヴァージニア・モレル,庭田よう子

人間の幼児なみのスピードで言葉を覚える犬がいた!
なぜそんな言語能力が発達したのか?

科学誌『サイエンス』に発表された驚きの研究成果

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 200個のおもちゃの名前を覚えるリコ

人間の幼児なみのスピードで言葉を覚えるボーダーコリー犬。 写真:Vincent J. MUSI/National Geographic Creative

ボーダーコリーは、おもちゃの写真を見て、それを実際に取ってくることができた。一体なぜか――。その驚くべき認識能力について探った、『なぜ犬はあなたの言っていることがわかるのか 動物にも“心”がある』が発売された。その一部を特別公開!

2001年、ボーダーコリーの「リコ」が、ドイツの人気テレビ番組『これに賭ける?(ヴェッテン・ダス?)』に登場したとき、科学者は大いに驚かされた。リコはおよそ二百個のおもちゃの名前を記憶していたのだ。自分のおもちゃのなかから、指示されたおもちゃを勢いよく取って来るリコは、テレビの視聴者を大喜びさせた。

当時、ドイツのライプツィヒにあるマックス・プランク進化人類学研究所で博士研究員だったユリア・フィッシャーも、その大勢の視聴者の一人だった。学友のユリアーネ・カミンスキーにリコの話を伝えたところ、二人でそのボーダーコリーの能力を検証することになった。

その結果、リコには並外れた言語能力が備わっていることがわかった。人間の幼児と同じスピードで言葉を習得し、記憶することができると、二人は『サイエンス』誌に発表した。

新しいおもちゃをなじみのあるおもちゃの間に置いて、その名前を教えると、リコはある種の単純な論理(「ほかのおもちゃは知ってるけど、これは見たことがない。だからこれにちがいない」)を用いて、ほぼ毎回、新しいおもちゃを取って来たのだ。そのおもちゃを一ヵ月間見なかった場合でも、リコは二回に一回はきちんと取って来た。繰り返し教えなくても、リコは自分の語彙に新しいおもちゃの名前を加えていった。

人間の二歳児を対象にした別の研究から、言葉の習得と記憶のメカニズムは脳に生まれつき備わることが判明していた。人間の二歳児は一日に約十個の言葉を覚えると言われる。新しい言葉を思い起こす能力は、言語習得に欠かせない要素である。

フィッシャーとカミンスキーは、これと同じメカニズムがリコの単語習得にも働いており、リコが用いた方法――専門用語で「即時マッピング」――は、人間の場合と同じではないかと考えた。

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