いま一番ホットなテレビドラマ
『しんがり 山一證券最後の12人』名セリフ第1位!

「会社の不正に物分かりの良い人間になってたまるか!」
実際には12いた「しんがり」がドラマでは7人に(提供 WOWOW)
『しんがり』担当の書籍編集者Aです。本の中には、心に染みわたる感動的な名場面、名セリフがいくつかありますが、その中でももっとも私がハマった部分をご紹介します。主人公である嘉本業務管理本部(通称:ギョウカン)長がじっくり語るこの場面、ドラマでは多少セリフが替わっていますが、江口洋介さんがビシッと決めてくれています! 前半のみどころ、読みどころです。

出世より大事なものがある

嘉本が実際に着任したのは、トクチョウ(SESC=証券取引委員会の特別調査部)のガサ入れから約一ヵ月後の五月十二日のことである。驚いたことに、社内調査の結果は文書にさえまとめられておらず、幹部の口頭報告も要領を得なかった。

――自分が社内調査を指示していたはずなのに、一体、どういうことだ?

営業の引き継ぎに没頭していた嘉本は知らなかった。ギョウカンの調査に対して、山一社内で妨害が始まっていたのである。長澤が打ち明けた。

「営業の連中が協力してくれないので調査が進まないのです。総会屋の口座は首都圏営業部にあったのですが、そこから、私に『よけいなことを(SESCに)言うなよ』と電話がありました」

「…………」

「『どうしてですか』と私も尋ねたのですが……。その時、たまたまトクチョウの調査官が私のところを訪ねてきたので、私の方から電話を切ってしまいました」

長澤に電話をかけてきたのは、首都圏営業部の担当取締役であった。彼は三十九年間のがむしゃらな営業で、中卒ではただ一人、役員にはいあがっていた。親分肌で、一時期、同じ職場で働いたことのある長澤も飲みに誘われたり、自宅に招かれたりしている。社長の三木淳夫にタメ口をきくことができる側近としても社内で有名だった。

しかし、妨害の話は、嘉本のどこかに火をつけたようだった。嘉本は長澤たちを集めて一気にしゃべった。

「他人様が、会社の中に入り込んで大規模な調査をやっているんだぞ。我々自身が調査しない、そんな馬鹿な話があるものか! うちの会社の不正や危機を他人に教えてもらうのか。それでは経営判断なんかできるわけがないじゃないか。我々の調査に圧力をかける奴がいれば、僕が対応する」

――会社の不正に物分かりの良い人間になってたまるか。出世するに越したことはないが、俺は立身出世を夢見て島から出てきたわけではないんだ。