現代新書
「景気はどうかね?」が口癖の84歳の父に、「景気はいいよ!」と断言してみたところ……?
景気がよくならない理由を考える
〔photo〕iStock

なぜ景気がよくならないの?

「景気はどうかね?」

というのが父の口癖である。私(髙橋秀実)は決まってこう答えている。

─よくないね。

アベノミクスなどといっても数値上の話でしかなく、景気は日に日に悪化しているような気がする。商店街もシャッターが下りて久しく、シャッターは錆びて黒ずんでいるし、道行く人々の顔にも覇気がない。電車の中でもスマホ画面ばかり見ているせいか一様にうなだれており、皆なにやらゾンビのようである。

「やっぱりよくないか」

今年84歳になる父は大きくうなずく。「そうじゃないかと思っていたんだよ」と肩を落とし、いつものように近隣に住宅の建築工事がないことをぼやく。

「よくないね」「やっぱりよくない?」「よくはないね」「やっぱりね」……。

しみじみとした親子の会話のようでもあるが、同じやりとりを1日に10回ほど繰り返すとさすがに疲れてくる。

口癖というより認知症の常同行動のようで私は心配になり、ある日、こう答えてみたのである。

「景気はいいよ」

父は目を丸くした。そして「景気がいいのか?」と念を押すので、私は「いい。景気はよくなった」と断言した。

すると父は満面に笑みを浮かべ、「それじゃ、ガッポリか?」と茶摘みのような仕草をした。

私も「ガッポリ」と相槌を打つと、父はそれこそ「夏も近づく八十八夜」の文部省唱歌『茶摘』にあるように「摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ」という勢いで、みるみる顔色がよくなり、目が輝き始めたのだった。

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