賢者の知恵
2015年09月18日(金) 森功

元暴力団担当刑事が分析!
「山口組分裂の行方」と警察当局の「対山口組戦略」

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【PHOTO】gettyimages

「この抗争は、資金源がモノをいう」

ノンフィクション作家・森功氏の新著『大阪府警暴力団担当刑事』が9月18日に発売された。ベテランの暴力団担当刑事の目を通じ、暴力団の実態や闇社会と芸能界のつながり、そして山口組関連の事件や「島田紳助引退の舞台裏」をありのままに描いた力作だ。裏社会に鋭く切り込む気鋭の作家が、山口組分裂騒動の内幕と行方を書く――。

8月27日に直系の13団体の組長が絶縁・破門処分となり、山口組の分裂がはっきりしてから20日が経過した。抗争に発展する危険性の高い当初の1週間ないし10日はおろか、3週間近く経ってなお、双方に表立った動きがない。

暴力団対策法と暴力団排除条例のダブルの取り締まりにより、ともに動けない、という見方の一方、「どこかのタイミングで抗争を仕掛けざるをえない」と指摘する声もある。

新組織を結成したのは山健組や宅見組をはじめとした14団体。対して残留した山口組直系は58団体だ。

斯界では絶縁処分を食らった組織が活動すると、敵対していると見なす。まして「神戸山口組」の旗を揚げ、シンボルマークである従来の山菱の代紋を使うという。本来なら、山口組本部として黙っているわけにはいかない。それがどちらも後に引けない理由といわれる。だが、実際は、やや事情が異なるようだ。

「今回の分裂騒動は、山口組六代目の司忍(本名・篠田健市)が山口組本部を出身母体の弘道会のある名古屋に持ってくる、という話が発端になっているという説がある。司自身がそう言ったとは思えへんけど、服役中の若頭、高山清司か、弘道会会長の竹内照明がその話を持ち出した可能性はあります。

竹内は高山のいる府中刑務所に面会に行っている。少なくとも、離脱した山健や宅見組側からは『名古屋に(本部を)持っていかれたら山口組ではあらへんので、やむなく出たんや』という声が聞こえてきます。つまり、その大義名分があるので、出たほうも強いのではないでしょうか」

元大阪府警捜査四課のベテラン暴力団担当刑事が、そう指摘した。分裂直前の8月、山健組組長の井上邦雄が、その竹内と揉めたという情報もある。1984年から89年にかけて続いた山口組と一和会の分裂抗争では、山口組本部の圧勝に終わった。だが、今回は暴対法が施行させている手前、容易に動けない。

「現在の暴対法で広域暴力団に指定されているのは、残った山口組本部であり、その意味では彼らのほうが不利です。本部が動けば暴対法で取り締まり、組事務所の使用禁止なども出せる。抗争になれば使用者責任を問えるので、司や竹内などを狙える。一般人を巻き込めば無期懲役になる」(同大阪府警刑事)

かたや新組織である神戸山口組に対しては、広域暴力団指定までに1年かかるとみられ、今は暴対法が適用できない。その間、みかじめ料集めなどの経済行為をしても、警察は中止命令を出せない。そんな強みもある。

つまるところ、暴力団の抗争は資金源がものを言う。山健組や宅見組と付き合いのある、ある団体幹部は「山健はこの1年、組員から月に1万円ずつ徴収してきたから、現金はかなり溜め込んできたはず」だと明かした。

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