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【特別対談】五木寛之×佐藤優
「大人の勉強」のススメ

いまこそ「異端の人」に学べ!
〔photo〕iStock

他人と同じ「普通」の人生が、本当の幸せとは限らない。思わず目を背けたくなるような問題が山積みで、先の見えないこの時代—あえて「異端」を目指せば、人生はもっと楽になるかもしれない。

「大人の勉強」に意味がある

佐藤優 五木さんがすごいのは、あれだけたくさん仕事をされているのに、'72~'74年、'81~'84年と2度も「休筆」されたことです。日本人には五木さんと違って、定年までオフを全くとれずに、燃え尽きる人が多い気がするんです。私は獄中でオフがとれましたが(笑)。

五木寛之 なるほど(笑)。

佐藤 下手に休むと、そのまま沈んでしまうかもしれないという怖さもある。それをどうやって乗り越えたんですか。

五木 当時の『小説現代』の編集長には「五木さん、流行作家というのは3年休むとイスがなくなるよ」と言われました。「そのときはまた新人賞に応募するので、よろしくお願いします」と答えましたが、あれはいわば、自分に課した「シベリア行き」みたいなものでしたね。

若いときに勉強するだけではなくて、人は40歳、50歳、60歳になってから、時間を作ってもう一度本を読み、頭を切り替えるのもいいと思うんですよ。40歳で2年間ほど職場を休んで、旅にでも出て、もういっぺん学生をやるとか。20代の頃と同じ本を読んでも、感じ方が全然違いますからね。

佐藤 じつは、イスラエル諜報特務庁「モサド」がそうなんです。彼らは、40代の職員に2年間の休暇をとらせます。「仕事から完全に離れて、好きなことをやれ」と。

五木 それは面白いですね。昔は人生50年と言われたけれど、これからは人生100年の時代が間違いなく来る。

人は誰でも65歳くらいからもの忘れが出てきます。そうなると、それまで一生懸命積み上げてきた知識などは、外側がボロボロ剥げ落ちて、エッセンスだけが残るわけですね。あの親鸞でさえ晩年は「字も乱れ、ものも忘れ」と書いていますから。

佐藤 私は外交官時代に相当酒を飲んだので、その歳まで持たないと思います(笑)。

五木 いやいや、佐藤さんはスーパー思想家だから大丈夫。しかし、そうなったときに残るものは何だろうと思うんです。定年以降の人生の残り3分の1、「第3の人生」を、単なる死への助走期間にするのはもったいないでしょ。

ですから、いま「反知性主義」が蔓延していると言われる中で「本を読むことは大事だ」「教養とは古臭いものじゃないんだ」と説く佐藤さんの本がこれだけ読まれているのは、世間でもそうやって学び直そうとしている人が増えて、皆が新しい「知の水先案内人」を求めている証拠だと思いますね。