野球
二宮清純「鈍足ノムさん『本盗』の勧め」

意表突いた新井のホームスチール

「人生には3つの坂があります。上り坂、下り坂、そして、まさか……」

 野村克也さんが、講演で笑いをとる時によく口にするフレーズです。

「人生だけじゃない。試合にもまさかはあるんですよ」

 それを絵に描いたようなシーンでした。

 さる9月2日、甲子園での阪神-広島戦で、広島の新井貴浩選手が、ホームスチールを決めました。

 1点を追う4回2死一、三塁の場面です。阪神のサウスポー岩田稔投手の一塁への牽制が逸れた瞬間、サードランナーの新井選手はホームに向かって猛然とスタートを切りました。

 それに慌てたのでしょうか。ファースト、マウロ・ゴメスの送球はワンバウンド。キャッチャー梅野隆太郎選手がミットに収め、追いかけるようにタッチに行った時には、新井選手の足はホームベースに到達していました。

 昨季まで阪神に在籍し、チームの内情を知る新井選手は“スキあらば”と狙っていたのかもしれません。

 ホームスチールを決められた岩田投手は「暴投気味に投げてしまったので、僕のせいです」と語っていました。