売れない役者くずれが総理大臣に。国家の一大事を影武者が救えるか。「理想の政治」を問う社会派エンタメ小説

インタビュー「書いたのは私です」中山七里
週刊現代 プロフィール

あの時の怒りを思い出してほしい

―物語の前半は、与党(国民党)の経済政策やエネルギー政策(原発問題)に慎策が付け焼き刃で答弁していくシーンの連続で、はらはらします。

慎策は最初、政治的なベクトルは樽見、知識は風間に引きずられるのですが、政治のど真ん中で揉まれるうち、義憤に駆られて不条理な現実に怒ります。そこで感情を顕に、素人ならではの素直さで正論を吐いていく。

被災地の復興予算流用問題では、「そんなもの、火事場泥棒と一緒だ!」と憤ります。これは現実でもそのニュースを知った時、大多数の国民が感じたことだと思うんですよね。でも、案外と皆さん、そんな問題があったことをもう忘れているかもしれません。

毎日、様々なニュースが流れていますが、不思議と忘れられやすい。たとえば、原発事故直後に全国で開催された公聴会では8割の人が「2030年までに原発ゼロ」を望んでいましたが、覚えていますか?

忘れやすいのは日本人の国民性なのかもしれませんし、腹立たしい問題や事件が立て続けに起きすぎなのかもしれない(笑)。小説をきっかけに過去の怒りを思い出すことがあってもよいかと、実際の時事問題ネタを豊富に入れています。

―野党や官僚、特に民主党がモデルの「民生党」の描写も痛烈なパロディになっています。

「杉下政経塾出身者によるホームルームのような国会運営」とか?(笑)

それもあの頃、みんなが思っていたことでしょう。僕は上品な人間ではないから、失態や失策はかなり辛辣に書いて、善悪のコントラストや素人とプロの相克を鮮明に打ち出すようにしています。

小説世界と現実がシンクロ

―それにしても驚くのは、物語の後半を盛り上げていく国際テロ事件の発生と集団的自衛権の議論です。これは最近の世論と政治状況そのもの。

この小説は昨年秋の脱稿で、最近の状況は盛り込めないスケジュールでした。ですから、今年1月のISIS(いわゆる「イスラム国」)の日本人拘束事件には僕自身も驚きました。小説に現実が追い付いてきたような奇妙な感じで。