科学的根拠なき「原発40年ルール」を変えるには、なにが必要か
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アメリカも「40年ルールに根拠はない」と明言

原子力発電所の運転期間を原則40年間に制限している、いわゆる“40年ルール”。これが今、大きな問題になっている。米国のルールを参考にしたものとされているが、“40年”という数値には科学的根拠はない。当の米国側がそういう見解を示している〔☆1〕。
☆1)http://www.huffingtonpost.jp/kazuo-ishikawa/us-40-yeas-rule_b_8043766.html

先月19日、自民党の『原子力規制に関するプロジェクトチーム(PT)』は、原子力規制委員会設置法附則に定められた「法律の施行後3年以内の見直し」に関する提言〔☆2〕を取りまとめた。その翌20日、政府(菅義偉官房長官)に申し入れるとともに、25日には原子力規制委員会の田中俊一委員長に提出した。
☆2)http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/129849_1.pdf

この「3年以内の見直し」は今秋の予定だ。私はこれまで、規制委とその事務局である原子力規制庁が行っている日本原子力発電敦賀原子力発電所や北陸電力志賀原発の“活断層”調査について、法的根拠のない“有識者会合”で、中立公正な審議が行われておらず、行政手続き上も大きな問題があるなど、多くの問題点を指摘してきた〔☆3、☆4〕
☆3)http://diamond.jp/articles/-/76382
☆4)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44397

これらに関連して、自民党PT提言には、「様々な分野において有識者を活用する場合には、いささかの政治的疑念も生じさせることなく、中立・公平な立場で調査が行われるよう、委員の人選を行うこと」や、「原子炉等規制法の審査プロセスなどの手続きについても、文書化し、明らかにすること」などが盛り込まれた。

規制委・規制庁の規制運用にかかる諸問題を是正する仕組みが備えられていないにもかかわらず、田中委員長は“監査は必要ない”と述べている。しかし、現行の規制委・規制庁の在り方について、自民党PT提言では、「監査室を設置し、業務が適切に行われているかをチェックする監視体制を充実・強化すること」が盛り込まれた。

今後、これらの提言が今秋の「3年以内の見直し」に反映されることを期待する。しかし、優先順位が高いと思われる非常に重要な改正すべき幾つかの事項が漏れている。原発の運転期間を原則40年間に制限している“40年ルール”を適格なものに改正していくための具体的方向性は、自民党PT提言には明記されなかった〔☆5〕。
☆5)http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H56_Z10C15A8PP8000/

私はこれまで何度も“40年ルール”に関する問題を取り上げてきた。冒頭で紹介した米国側の見解〔☆1〕の他、日本でも40年ルールの設定には科学的根拠が全くなく、政治的に決められたものであることを指摘した〔☆6〕。また、この“40年ルール”が検討されてきた当時の国会審議の模様も解説し、「科学と技術」に基づく判断でなく、「政治と空気」による妥協で、しかも専門家でない政治家が決めた危険な規則であることを指摘した〔☆7☆8〕。

☆6)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44241
☆7)http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/150316/cpd1503160500002-n1.htm
☆8)http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/42231

今回の自民党PT提言において、“40年ルール”の抜本的な見直しが盛り込まれなかった最大の理由は、自民党内にあるエネルギーコスト論やエネルギー安全保障論を踏まえた真っ当な原子力政策の流れではなく、多くのマスコミが作り上げた“原発を否定しない人はとにかく糾弾する”といったような空気を意識し過ぎたため腰が引けてしまったことにある……私にはそのように思えてならない。