消えた元四番打者 広島カープ栗原健太の「現在」

【プロ野球特別読み物】
週刊現代 プロフィール

本人から『監督。僕は絶対にこのまま終わりませんから。もう一回、上で頑張りますから』と聞き、少しほっとしました」

本人の意気込みとは裏腹に、栗原を取り巻く現実は厳しい。

かつての4番が、二軍でも先発で出られず、代打要員。出場はわずか30試合に満たず、打率は1割台に低迷している。それが今、栗原がいる「場所」だ。

あのホームランをもう一度

だが、そんなところにも一筋の光が差し込むことがある。

8月22日、山口・由宇で行われた阪神戦。いつもと同じように代打で登場した栗原は、レフトへ今季1号となる特大弾を放った。栗原の高校時代、担当スカウトとして山形まで何度も通った苑田聡彦・スカウト統括部長も偶然視察していた。

「翌日に広島でスカウト会議が予定され、全国からスカウトが集まってきていたので、みんなで由宇球場に観に行きました。

あの日、練習から見ることができましたが、栗原は右ひじがきれいに伸びるようになっていた。タイミングの取り方も戻っていて、一軍でバリバリやっていた時のスイングに近かった。本塁打は、130mはゆうに超えていましたよ。

彼が高校3年生のとき、どえらい本塁打を打っていたのをよく覚えていたので、本塁打を打った後、『高校3年のときを思い出したぞ』と声をかけたら、笑顔を見せてくれました。

僕は現場の選手起用についてどうこう言える立場にはないけど、今の一軍は本塁打を打てる打者が少ないし、健太はチャンスに強いから、使ってもらえるといいのに、とは思います」(苑田部長)

栗原の故郷、山形県天童市内で焼き肉屋を営む母・順子さんは、遠く離れて苦悩する息子についてこう語る。

「本塁打はファンの方が撮られた映像を送っていただいたおかげで、見ることができました。『代打、栗原』というアナウンスがあると『栗原〜!』ってファンの方が言ってくださる。それだけでもう、胸がいっぱいになった。本塁打を打った健太の心からの笑顔を久々に見られて、嬉しかった」

7月下旬、仕事の合間を縫って、順子さんは二軍戦を観にいった。

「健太とは試合後に食事をしました。今どうなのか、これからどうなるのか、もちろん心配ですが、あの子は『調子は悪くない』としか言わないから……。

その日は健太の家に泊めてもらいました。由宇での試合は大抵12時半開始ですが、広島は試合前でも、調整ではなく厳しい練習をするので、健太も若手に交じって練習をしに行くため、早朝5時半に自宅を出ていきました。

プロは、結果がすべての厳しい世界だというのはわかっています。それでもあの子の努力が、頑張りが、もう一度報われる日が来ることを、私は祈っています」

恩師や母だけでなく、栗原の復活を待っているファンもたくさんいる。特大のホームランをマツダスタジアムでまた打つために、栗原は、バットを振り続ける。

「週刊現代」2015年9月12日号より


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