アメリカ人禅僧が見た、日本企業の「ホンネ」と「タテマエ」
オリンパス、東芝……なぜ粉飾決算が続発するのか
〔photo〕gettyimages

7月末、日本社会の強さと脆さについて考える対談集『アメリカ人禅僧、日本社会の構造に分け入る』が刊行された。

著者のミラー和空氏は、2009年に得度した禅僧である。来日後、翻訳会社や財務広報会社の勤務を経て編集デザイン事務所を設立。企業広報用資料の企画・制作のほか、現代詩やノンフィクションの書籍の翻訳・デザインを請け負って現在に至る。

また、オリンパス元社長マイケル・ウッドフォード氏が告発した「オリンパス不正疑惑事件」が表面化するに際してはウッドフォード氏の友人として重要な役割を果たした。東芝の不正会計など、あいかわらずの日本社会のようにも見える。虚心に和空氏の指摘に耳を傾けたい。


 日本との出会い

──アメリカ人禅僧、日本社会の構造に分け入る』は、著者の和空さんがまるで禅の修行で多くの道場の門を叩くように、学界、マスコミ、ビジネスマン、陶芸家から料理人に至るまで各界一流の人たちに教えを乞うて歩く、その問答のさまをそのまま本にしたような印象を受けました。

和空 そう言っていただけるとありがたいです。偉大なる先輩たちが、すでに巧みに語り尽くしてきた日本の魅力。そこに屋上屋を架して「美しい日本の私」を試みるつもりはありませんでした。

魅力があるのは当然のこと、むしろ逆に、永年にわたり、この国、その首都圏で生活を送りながらも、いまなお解けない謎……この国のどうしようもないダメさを中心にいくつかの観点から探ってみたくなったのです。そういうしだいで、謎ごとにその解答を「知っていそう」な専門家の許へ出向いて、解説を求めることにしました。

──して、その結果は?

和空 こんな個性的かつ優秀な方々がそれぞれの分野で活躍し、それぞれの観点から日本を「よりよい方向へ」引っ張ろうとしている姿を目撃して、つい、日本の展望について楽観的になってしまった、不本意ながら(笑)。

──不本意なのですか?

和空 そもそも「オリンパス事件」という辛い体験を題材に「辛口提言」の本を書こうと思い立ったのがこのプロジェクトの発端だったんです(笑)。なのに、むしろ希望に満ちた話を軸に展開することになった。みなさん話題のなかに問題提起の要素を多く含んでいますが、いずれも打開策を直接的に、あるいは間接的に提言しています。ぜひ読んでいただきたいです。

──そもそも日本とのご縁はどうして生じたのですか?

和空 大学院の修了を機に世界一周の旅に出たんです。志はあれど金欠のため、まずは旅費の調達のために日本へきたんです。英会話学校に就職しました。あくまで短期滞在、立ち寄っただけのつもり。日本について知識もなければ興味もありませんでした。

ところが、住んでみたら東京の空気は意外となじみ、日本にそのまま留まることになりました。

──その後、どういうお仕事をされてきたんですか?

和空 インベスターリレーションズ(IR、「財務広報」!?)に携わってきました。

その仕事にかかわりはじめた三十余年前、日本企業の財務情報開示は非常に原始的な段階にとどまっていました。やがて私は日本企業における数字の捉えかたについて根強い懐疑心を抱くようになります。

財務情報開示に関しては内外の隔たりが依然として大きい。もちろん、日本でも、より徹底的な情報開示を要求する会計基準は段階的に採用されてきました。

しかし、それにたいして日本の企業社会が一貫して反対姿勢をとってきたことも事実。むしろこちらこそ、タテマエの裏に潜むホンネではないのか……と。

──と、おっしゃいますと……?