「ナンパの達人」と「インタビューの名手」が明かす、コミュニケーションの極意
特別対談 聞き・書き・生きる(前編)
〔photo〕iStock

800人を超える人たちと濃密な対話を重ねたインタビュアー、尹雄大(ユン・ウンデ)。ナンパ・催眠術をへて新しい心理療法のかたちを探る気鋭のカウンセラー、高石宏輔。前後して刊行されたお二人の著作『やわらかな言葉と体のレッスン』と『あなたは、なぜ、つながれないのか』を通して、それぞれがどのようにして他者と出会ってきたのかについて、多様なイメージから語る。

「弱さ」を克服するために「強さ」を身につけるのではなく、身体と感覚をとおして「しなやかさ」を見出した二人が交わすコミュニケーション論。

書くことと生きること

――お二人のご本を拝見していて、そこに書かれていること、あるいは書くということが、そのまま「生きる」ということにつながっているように感じました。お二人にとって、書くということがどのような意味を持っているのか、まずそこからうかがいたいと思います。

:いまは誰でもブログを書いたり、ツイッターの140字でコンパクトに言いたいことをきっちり書く人がたくさんいます。端的にすごいなと思います。

ライターとして初めて依頼された仕事が週刊誌の読者プレゼントのコーナーでした。「今週は缶コーヒーを80名様にプレゼント」といった内容でしたが、その程度も満足に書けず、一回でクビになってしまいました。

尹雄大さん

そのときの自分を振り返ると、いつも半透明のフィルター越しに世の中をぼんやりと見ていた気がします。だから書くとは感覚的なクリアーさを伴っているという感じがします。

高石:僕の場合は、本を書く人になるというイメージがあまりなかったんです。でも、文章を読んだり書いたりするのは好きでした。だから、文章を書いてと頼まれたら凄く嬉しいです。嬉しいけど、良いのかな……とも思います。

いまも別の本を書かせてもらっているのですが、それも良いのかなという感じがあります。『あなたは、なぜ、つながれないのか』もそうでしたが、枠組みを編集者さんに与えてもらって、こういうことを書いてくださいと言われて、それに対して、思ったり考えたりしたことを思いっきり書くんですよ。わーって。

書いたものが良いかどうかはわかりません。でもたくさんの本に携わっている編集者さんが読んでくれるから、何か違っていたら違うって言ってくれるだろうと思っています。

その意味で僕の中に正解はありません。正解をはかる物差しがないから、とにかく気持ちをぶつけるしかないと思って、わーって書くんです。で、編集者さんに送る。そんな感じです。

編集者さんに読んでもらえるということがすごく幸せなことだなと思っています。ツイッターやブログを書いても、見る目を持っている人が何かを言ってくれることは稀ですよね。編集者さんはいつも何かを言ってくれます。これは本を書いてくださいって言われた人だけの特権だなと思うんです。

高石宏輔さん

そういう感じで、特別な文章教室に入れてもらったという感じがあります。

:人からどうこう言われても、その場でリアクションしないし、編集者に言われた通りのことを「はい」と受け容れて、それに対してきっかり返すというより、全然違うふうに書いたりします。だから相手によってはコミュニケーションが成立しているかどうかわからなくて不安に感じるかもしれません。

それに今回の『やわらかな言葉と体のレッスン』も前著の『体の知性を取り戻す』もそうですが、ノウハウも解答も書いていないから、読者の人もリアクションとりにくい内容ではないかと思います。

高石:僕は尹さんの本を二回読みました。一回目に前半部分を読んだ時にじりじりとしました。速く走りたいのに走れない、みたいな。もうちょっと何か言ってよ、という気分になりました。

でも、途中から、尹さんがインタビュアーであるということがハッと思い浮かんだんです。「もしインタビューを受けたらこんな感じになるのかな」って。なぜかと言うと、読みながら、僕はこう思っているということを強く感じるんです。その思いが昇華されるというよりは、むずむずと自分の中に残っていきました。そして、それを放出するように走りたいと思うのですが、そうやって走るのをじっと制止されているような感じがありました。

そのとき、もしインタビューを受けていたら「僕はこう思ってるんです」って、むずむずしたものを尹さんに伝えるなって思って。インタビューを受けるというのはこういう感覚なのかなと思いました。前半部分はそういう色が濃くて……よかったです。