「フィジカルな感覚は楽曲より長く続く」 多角的な体験提供する新鋭バンド「Awesome City Club」インタビュー

新作再現ライブ&撮影OK、バーチャルシングル、クラウドファンディング……
佐藤 慶一 プロフィール
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日常にリンクする楽曲を出せたのが大きな変化

――今回のクラウドファンディングシングルでは「アウトサイダー」という表題曲が収録されています。atagiさんは作曲を担当していますが、どういうことを考えましたか?

atagi:ぼくはいつも考えていることがあるんです。売れるか売れないかよりもまず、メンバーがこういう曲をやっていたらどう映るのかな、その姿は果たしてイケているのかなとか……メンバーが演奏している楽曲像を意識して作曲しています。今回のアウトサイダーではまた違った一面を出せそうだと思いました。

――その一面とは?

atagi:これまでの楽曲よりも、ずっと開けているというか。ストリングスも入っていて、とにかく心地いい。そういう開けたポップな曲をつくりたいと思いました。

――これまでAwesome City Clubは"架空の街"をイメージした楽曲を奏でてきました。今回はそれとは違い、マツザカさん(Ba/Synth/Rap)による歌詞はメッセージ性が強く、身近に感じます。

atagi:今回の歌詞になっているのは、SNSを通じた人と人との関係やコミュニケーションについてです。ただ、ぼくらとしてのメッセージとしては、それが良い悪いではなくて、当たり前のように使うSNSの世界は現実とは違う部分があると思っていて。その特異性というか、SNSがあるからこその葛藤や思いを歌っています。

PORIN:これまでの楽曲は音楽としては気持ちよくても、メッセージ性は薄かったので、「架空の街Awesome Cityのサウンドトラック」を歌っていたのとは、また違う面が出ていると思います。日常にかなりリンクする楽曲が出せるようになったのは、バンドとしても大きな変化だと感じます。

――SNSの特異性といえば、つながりすぎると発信しづらい、みたいなことはありますよね。

atagi:そのあたりはおもしろいですよね。知り合いが多い場所では言えないことでも、顔も知らない会ったこともない人には言えたりしません? 見えない人に対するほうが心を開ける、本音を言える場面があるのはインターネット時代ならではですよね。

――「アウトサイダー」のミュージックビデオは東市篤憲さんが手がけられ、ピンボールを背景にカラフルな映像が投影されていました。

atagi:演奏シーンを撮影してCGをあとで差し込むのではなく、事前に用意した映像をプロジェクションマッピングするという、シンプルかつ大胆なアイデアでした。また、東市さんに会ってすぐに「好きなものは?」と聞かれて、それが映像に反映されているのがおもしろいです。

PORIN:私は卓球と答えたので、ピンポン玉とラケットが映像に入っています。

atagi:ぼくは魚にしたので映像でもけっこう目立っています。こうやって、東市さんとメンバーでお話した内容がポンポン入りつつ、クリエイティブなものができたことに感激しましたね。

バンド名を知らなくても、体験を持ち帰ってほしい

――今年4月のメジャーデビュー後についても伺わせてください。端的にインディー時代と比べてどんなことが変わりましたか?

PORIN:ファーストアルバムを出してから、環境が一気に変わりました。人とかかわること、プロフェッショナルな方々とご一緒する機会が増えて、自分たちの考え方が変わった部分もあるのかなと思います。

――Awesome City ClubにはDIY志向というか、クリエイティブ面やメディア露出に戦略性を感じていました。自分たちで全部をやらないようになったということでしょうか?

atagi:そうですね。やっぱり各分野のプロフェッショナルな方々に任せるようになりました。そういう人たちはスピード感も仕上がりのよさも段違いです。ぼくたちにとっても、いいものに触れることで、そこからいい影響や刺激を受けることが多くあります。これまでやったことない表現に挑戦するとき、プロフェッショナルな方々の力を強く実感します。

――5月にはロックフェス「VIVA LA ROCK」に登場しました。

PORIN:VIVA LA ROCKがはじめてのフェスだったので、このバンドをどう見せていくのかはメンバーで議論しました。いい音楽をやっているのは大前提で、それを再現しつつ、来てくれたお客さんを楽しませたい、という思いが強かったです。こういう感情ははじめて生まれました。だからこそ、そのためにパフォーマンスやお客さんとのかかわりを考えるようになりました。

――「It's So Fine」という曲の前にはステップのレッスンをして、曲中は会場全体でステップを踏みました。このことも、お客さんとのかかわりを考えた結果でしょうか?

PORIN:そうですね。はじめて見てくれた方にとって、楽曲はもちろん一体感があったライブだと覚えてくれたらいいなあと思いました。

atagi:フェスではぼくらのことを知らなくて、たまたまあの時間に来ていたという人もいたと思います。「ぼくらのことを覚えて帰ってください」との思いはありますが、見ている人がバンド名は知らないけどなんか楽しかったなあとか――クラウドファンディングと同じですが――体験を持ち帰ってくれたら素敵だなと思っていて。

ステップを踏んだり、手を上げたりしたことって、帰ってからも体が覚えてますよね。一方、悲しいことに、楽曲って時間が経つと細かい部分までは覚えてないと思うんです。その場の一体感やフィジカルな感覚って、ライブが終わってからも反芻できる。そういうライブを提示したいと考えていました。

――8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に出演しました。昼間に演奏した真夏のフェスはどうでしたか?

PORIN:昼間にパフォーマンスするのは不思議な感じで、とても暑くて、意識朦朧としていました(笑)。お客さんのほうが絶対暑いのに、みんな手を挙げてくれるし、それを見ていて嬉しかったです。あと、フェスならではかもしれませんが、お客さんは音楽を聴きに来ているというより、盛り上がりに来ているという感じが印象的でした。

atagi:夏場の昼間、太陽光の強い明るい場所で演奏するのって、室内と違って照明が効かなかったりするんです。そういう状況のなかで、曲の雰囲気をどう伝えるべきかを考えました。演出ではTHE FORESTの森さん(森正志氏)にお世話になっているんですが、ステージに扇形のカラフルなLEDスクリーンを設置して、ぼくたちらしい環境でライブができたと思います(参照:「シティポップの新星、ひたちなかに登場!」)。 

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