「30代の出産」は合理的なライフプランか?
「働く女性白書」から考える女性の人生設計

 4月9日付で厚生労働省から「平成21年版 働く女性の実情」(女性労働白書)がリリースされた。

  発表によると、女性の労働力人口(生産年齢外の就業者・失業者を含む)は過去最多の2771万人となった。しかし、女性の就業者数は前年に比べて18万人減少しており、逆に完全失業者数は27万人増加して133万人となったという。景気が後退して生活が苦しくなるのとともに、女性は働きに出ようとした。

 しかし、残念ながら職が得られなかった人が多いだけでなく、職を失った人が相当数いたという厳しい状況だった。

 生産年齢(15~64歳)の女性の労働力率は62.9%と、7年連続の上昇となり、過去最高を更新した。生産年齢では、三分の二近い女性が労働力化しており、今や、専業主婦ははっきりと少数派だ。すべてがそうでないとしても、夫は外で働き、妻は専業主婦という伝統的分業が可能な家計は「恵まれている」。

 過去10年の変化を見ると、女性の労働力化率は、既婚者の「30~34歳」の階層での変化が大きい。この年代の未婚者の労働力化率は0.9%しか上昇していないが、有配偶者では9.0%も上昇しているという。10年前も今も、30代前半の未婚者の約9割は働いていて、大きな変化はなかったが、既婚者の労働力化率に関しては44.2%が53.2%に上昇した。

 今や、30代前半の妻達の半分強が外で働こうとしている。これに加えて、この年齢レンジの未婚率の上昇が「労働力率」の上昇の原因だ。

 もちろん、女性が働く動機は「生活のため」だけではないだろうが、近年の女性の労働力化率の上昇が主に有配偶者層で起きていることを見ると、生活費を補うために女性が働きに出るという動機が働いていることは明らかに思える。

なぜM字カーブが生まれるのか

 女性の労働力化率を年齢階層別に見ると、「25~29歳」(77.2%)と「45~49歳」(75.3%)の二つの年齢階層にピークがあり、間に入る「35~39歳」が65.5%とかなり凹んでいる。「30~34歳」の層も67.2%と相対的に低い。

 このふたこぶの駱駝の背中のようなM字型のカーブは、働く女性が30歳代に出産で職場を離れる行動を反映している。

 高校・大学といった高等教育を終えて就職し、しばらく経つと、多くの女性が結婚相手を見つける。結婚しても、夫の収入だけでは不足ないし、不満な場合もあるだろう。せっかく得た職業キャリアを無にするのも勿体ないから、しばらく働き続ける。しかし、30歳台になると、子供を生むことが可能な期間がだんだん残り少なくなってくる。

 仕事は辞めたくなくても、子供を生むために職場を離れることになる。そして、出産・育児が一段落する40歳台には、生活費補填の目的や、もともと仕事を辞めたくなかったなどの理由で、女性は再び職場に戻ろうとする。

 しかし、多くの場合、出産・育児で離職した女性は元の職場に戻るわけではない。まして、離職期間中に継続して働いていた場合に得られるポジションで再雇用されることは希だろう。再び働く際の職場では、収入は高くないし、必ずしも満足できるやり甲斐のある仕事に就けるわけではない。

 職場での状況を、たとえばその女性が新卒で入社したときの同期の男性社員と比較してみた場合、男性社員は(すべてがではないし、それなりの苦労はあるとしても)仕事のキャリアの連続性を維持するから人材価値が下がらない。勤続年数とともに収入も上がる場合が多いので、出産で離職する女性は経済的にかなり不利な条件を負っていると言える。

 また、女性の出産・育児離職は、本人にとってだけの問題ではない。会社の側、上司の側から見ても、30代の半ばに小さからぬ確率で離職する可能性の大きな女性社員は、教育的な投資を行ううえでリスクが大きい。

 これは、たとえば、オンザ・ジョブ・トレーニングを考えると、潜在能力が同じだと判断すれば、女性社員よりも男性社員に将来に繋がる経験をさせようと考える理由になる。

 一方、会社側の別の考慮要素としては、出産・育児を機に女性が離職するのであれば、女性の数を通じて人件費を調整しやすいという隠れたメリットがある。

 何れにしても、少なくとも出産というイベントが女性が働く上でのハンディキャップになっていることは確かであり、グラフに見る駱駝のこぶの谷間はその重荷を象徴している。

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