【リレー読書日記・堀川惠子】
大御所作家の〈書き続ける〉貪欲さに思わず息をのむ

「書き続ける」ということ

最近、大沢在昌さんの本が出ないな、と思いながら書店を覗いていると、ようやく『極悪専用』を見つけた。もとい前作は去年7月の出版だから、長いブランクがあったわけではない。むしろ短い。ファンにとっては長く感じられた、という方が正確だろう。

今回の作品、従来のハードボイルドとは毛色が違い、エンタメ色の濃いブラックコメディだ。

プロの殺し屋、テロリスト、暴力団専門の金融業者。そんな闇社会の人間ばかりが集まるマンションの管理人が主人公だ。殺人や銃撃戦は日常茶飯事、極秘裏に行われる死体処理料金の値上げが管理組合で議論されたりもする。マンションという日常の風景を舞台に、奇想天外な出来事が繰り広げられる。

世界一安全と言われる日本。だが、データを覗くと意外な風景が見えてくる。警察庁の去年の統計では、届け出のあった行方不明者は8万人余。年間の不審死14万人、そのうち司法解剖に回されるケースは1割未満。出生の記録があるのに、所在の掴めぬ子どもは約5000人。日本を「殺人天国」と言う人もいる。

事件に巻き込まれて殺され、そのまま遺棄されて行方不明扱いになっている人も、実は多いのではないか。もし、そういう人が万単位で存在するならば、永遠に発見されない方法で死体回収を請け負うプロがいないとも限らない……。そんな恐ろしいことを想像させられたりもして、この本、やっぱりブラックだ。

その大沢さんのインタビュー記事が、少し前の本誌(週刊現代)に載った。デビューは1979年、すでに36年も書き続けているというから驚いた。その間、数々のヒットを飛ばし、受賞もし、読者を惹きつけるストーリーを次々に展開していくのだから、想像力の源は一体どうなっているのだろうと思う。

一発のヒット作で終わる人も少なくない中、〈書き続ける〉というのは大変なことだ。先月の読売新聞に赤川次郎さんの特集が掲載された。赤川さんの著作の累計発行部数は3億冊以上、今でも年に10冊ペースで刊行が続くという。書く意欲が衰えないのは「書くことが好きだから」とサラリ。

やはり先月の朝日新聞に特集された葉室麟さん。こちらはデビューが54歳、直木賞を受賞したのは還暦を過ぎてからという遅咲きだ。人生で30冊は書くと決め、今では40冊に届くとか。それでも「もっと先へ行きたい」と貪欲さを隠さない。