自民党、教科書採択に圧力
〜「世界の常識」を否定する妄説を子供が学ぶ国へ

『週刊現代』官々愕々より

「積極的軍事主義」が根付くと

 

8月19日、ノルウェーの平和学者、ヨハン・ガルトゥング博士が来日し、安倍政権の看板政策「積極的平和主義」を真っ向から否定して話題になった。

ガルトゥング博士が定義する積極的平和とは、単に戦争がない状態を指す「消極的平和」と対を成す言葉だ。博士は、貧困や差別といった構造的な暴力のない状態を「積極的平和」と定義している。これを目指すためには、外交や草の根交流などによる対話と和解、そして人道支援や経済協力などが必要だ。これが本来の「積極的平和」主義の意味するところである。

これは日本国憲法の前文・第9条と軌を一にするものだと言って良い。博士も日本が「9条が当たり前の世界にしよう」と主張すべきだという。

その博士に「『積極的平和』とはかけ離れている」と言われてしまった安倍氏の「積極的平和主義」。米国などとの軍事同盟を拡大し、世界中で軍事力を行使して「平和に積極的に貢献する」という。誰がどう見てもまがいものだということは明らかだろう。

実は、このコラムで(昨年10月4日号)、安倍総理の「積極的平和主義」が平和学の定義とはかけ離れたまがいものであることはすでに指摘したところだが、今回は、本家本元に看板政策を否定されたのだから、五輪エンブレム盗作問題などの比ではない、かなりの深刻度だ。

ニュースだけでなく、バラエティ番組などでも、大きく扱われるだろうと思ったが、大手メディア、特にテレビ局は、ニュースやインタビューでこの話を取り上げたものの、何故か「まがいもの」批判というトーンを抑えて、地味な報道に終始した。安倍総理の看板政策に真っ向から切りつける報道は、支持率が下がったと言ってもやはりまだタブーなのだろう。

かくして、わが国では、一国のリーダーが、非常識なキーワードを世界に向けて堂々と唱え続けることになってしまうのだ。

しかも、さらに心配なことがある。

最近、自民党が保守色の強い教科書の採択を市町村教委に働きかけていることだ。安倍総理に近い議員の集まりである「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が、保守色の強い教科書に好意的な評価を載せたパンフレットを地方議員に配り、事実上の圧力を強めている。

その効果もあり、保守色の強い教科書を採択する自治体が相次いでいるのだ。その代表である育鵬社の教科書。フジサンケイグループのマークを堂々と載せているのだが、もちろん、内容を見てびっくり仰天。中学の「新しいみんなの公民」では、集団的自衛権を「解釈改憲」で認めるべきだという「超少数説」がわざわざ紹介されている。

一方、最も標準的な東京書籍の教科書「新しい社会公民」では、ガルトゥング博士の積極的平和の考え方が、しっかり記述されている。しかし、こうした教科書が徐々に使われなくなって行くのだ。

このままでは、世界の常識を否定し、学界の異端説を妄信する若者が溢れることになるかもしれない。その時こそ、安倍総理の目指す「積極的軍事主義」が国民の中にしっかり根付き、平和憲法は跡形もなく改正されてしまうのではないだろうか。

『週刊現代」2015年9月12日号より

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