自分も品乳ブラもメディアといえる――20歳・ハヤカワ五味の「人に影響を与える」という仕事

2015.9.10 THU

「世の中にたくさんのメディアがあるなかで、私は意識的にファッションを選びました。衣食住のひとつなので、たとえイヤでも小さい頃から毎日付き合っていくものじゃないですか。

わたし自身、中学3年生のときにロリータ服にすごくハマって、人生が変わりました。そう考えるとファッションって、見た目はもちろん、人生に大きな影響を与えているメディアなのかなと思ってて……。

いまはどちらかというと、アート的なファッションがあふれているんですけど、もっと媒体(メディア)としてのファッションが増えてほしいと感じています。そのことも、私がファッションを選んだ理由のひとつです」

20歳のファッションデザイナー・ハヤカワ五味さんは、ファッション分野を選んだ理由をこのように語ります。これまで彼女とそのチームが製作した「キリトリ線タイツ」や「品乳ブラ」などの商品は、SNSを通じて広がり、多くの話題と共感を呼びました。

10代の頃から「現役女子校生デザイナー」として多数のメディアから注目を集め、現在はテレビや雑誌などマスメディアに登場することも珍しくないハヤカワさん。今回彼女のもとを訪ねたのには、理由があります。

自分自身がメディアであり、ファッションもメディアである――。この点にとても自覚的なのではないかと思ったからです。

それだけではありません。

ハヤカワさんのものづくりの背景には、「自分がいちばんの消費者」「人をデザインすること」「複業的な働きかた」といったことも関係しているようなのです。「メディア化する個人」であるハヤカワさんが捉えるメディアとは――(取材・佐藤慶一、徳瑠里香、藤村能光[サイボウズ式]/写真・三浦咲恵)。

ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)
ファッションデザイナー。1995年、東京都出身。多摩美術大学グラフィックデザイン学科2年。高校時代から創作活動を始め、大学生になって立ち上げた胸の小さな女性のためのランジェリーブランド「feast by GOMI HAYAKAWA」は「品乳ブラ」として一躍有名に。2015年に株式会社ウツワを興し、代表取締役に就任。同年5月にラフォーレにてポップアップ出展。6月にランジェリー付きムック本『feast CollectionBook 2015 Summer』(泰文堂)を発売。Twitter:@hayakawagomi

演出が強いメディアに消費されないように

――これまでさまざまなメディアで、ハヤカワさん自身の人柄や思い、ブランドの背景が語られてきました。この取材では、メディアや働き方について伺いたいと思います。まず率直に、ご自身が"メディアになっている"という実感はありますか?

ハヤカワ:自分がメディアになっているという実感はあります。ひとつは、情報発信について。やっぱり、クリエイターの方には多いと思いますが、制作にかかわるメンバーを見ていても前に立ちたくない人が意外と多いんです。そこにはコアになるコンテンツがないこともあります。そこに私が企画やコンテンツを与えることで、めちゃくちゃハネるという流れがありました。

もう一つは、人が集まるということです。私には技術力がないので、まわりにはデザインや映像、写真などクリエイティブが得意な人が集まっています。そういった人に仕事を振ることで、私とメンバー同士が双方向につながる関係を築けています。

ただ、実際、私自身と「ハヤカワ五味」の本質は違います。ハヤカワ五味はいま、ひとつのキャラクターというか、会社のロゴ的な位置づけになってきていると思います。

――「ハヤカワ五味」として数え切れないほどメディアに登場していますが、メディアにどんなイメージを持っていますか?

ハヤカワ:メディアはいい意味でも悪い意味でも演出が入るものだと思っています。たとえば、高校生のときには「現役高校生デザイナー」という見出しで取り上げられました。私も演出する側に回ることがありますし、大学では広告を学んでいるので、企画側の気持ちはわかります。

でも、そこは冷静になって否定していきたいです。いまだと「女子大生デザイナー」とか言われるのかもしれませんが、人目を引きやすいコピーで消費されないようするというか……私以外にも注目の「女子大生○○」といった肩書きが付くような人ってたくさんいると思うので、そういう人に譲っていきたいですね(笑)。 

品乳ブラ「feast」もメディアのひとつ

――そもそも、メディアと聞いたときにどんなものを思い浮かべますか?

ハヤカワ:高校生のときであれば、テレビや雑誌、新聞を思い浮かべたと思います。でも最近は人対人の仕事をしていることで、メディアのイメージも広がってきました。私の仕事でいえば、それこそ品乳ブラ「feast」はひとつのメディアだと捉えています。

いまのものづくりって、プロダクト自体をデザインして終わる人も多いと思うんです。でもわたしがやりたいことは、プロダクトを通して人の価値観を変えることです。それってメディア以外のなにものでもないと思います。

だから、私がつくるものは、プロダクトではなくメディアと言うようにしています。ものづくりをしているのではなく、その先にある「影響を与えること」「人をデザインすること」をすごく意識しているんです。

mermaid Set (新作/参考商品 feast by GOMI HAYAKAWA)

――身近なメディアとなると、どんなものになるんでしょうか? 

ハヤカワ:ファッションというメディアはとても身近です。たとえば、靴や時計。靴であれば、機能性の高さだけでなく、相手からの評価にも影響します。時計は手元という狭いスペースだけでも、さりげなく年収を伝えることができるくらい影響力があります。

靴や時計のように昔から高いブランドがある製品は、それ自体にメディア力を持っているのかなと。本人や世間的なイメージに影響するものって、コンテンツとしてもメディアとしても完成されている感じがします。

メディアとしてのファッションが増えてほしい

――ファッションをメディアとして捉えていらっしゃいますが、活動や事業の対象としてファッション分野を選んだのはなぜでしょうか?

ハヤカワ:ファッション以外にもたくさんのメディアがあるなかで、なんでファッションにしたかというと、衣食住のひとつなので、たとえイヤでも小さい頃から毎日付き合っていくものじゃないですか。だから人生に与える影響も大きいのかなと思います。

私の原体験といえば、中学3年生くらいにロリータ服にすごくハマったことなんです。ロリータ服によって、いい意味で人生が変わりましたし、ファッションの影響力を実感したきっかけになっています。

それこそファッションって、見た目に影響を与えるじゃないですか。人は8割くらい見た目で決まるところがあると思うんですが、その印象を操作できるのは革新的です。

いまはどちらかというと、アート的なファッションがあふれているんですけど、もっと媒体(メディア)としてのファッションが増えてほしいと感じています。そのことも、私がファッション分野を選んだ理由のひとつです。

ファッションは発信するツールでしかないとも思ってて、ファッションのデザイン自体が評価されることについては勉強不足でよくわからない部分もあります。たとえば、パリコレとか見てもよくわかんないです。

結局のところ、ファッションは相手にどう思われるのかというコミュニケーションの部分にも大きな影響を与えています。それはメディアとして魅力的なので、まずはそこを突き詰めていきたいです。

ものづくりは感性、情報発信はロジカル

――コミュニケーションデザインのお話にもつながりますが、大学でデザインよりも広告を学んでいるのはなぜでしょうか?

ハヤカワ:まず広告は、何に対してもベースになる考え方だと思っています。たとえどんなにいいものがあったとしても、伝える手段がなければ売れない。そのことを高校生時代に痛感したんです。

当時はアングラ系のような狭い界隈でタイツなどを売っていたんですが、売れる人と売れない人の差がはっきりとありました。もの自体のいい悪いというよりは、発信次第で売上が左右されることを、身をもって感じました。

いま私のまわりにも、自分のやりたいことがあっても伝え方が上手じゃない人がいます。でも、強いメッセージやなんとかしたい気持ちがあれば、あとは伝え方次第で1にも100にもなると思ってて……。だから広告やメディアについてよく勉強したほうがいいと判断しました。

――宣伝や発信の重要性がわかっているからこそ、ハヤカワさんが発表する商品はSNSで広まっているんですね。

ハヤカワ:そうですね。やっぱり、まずは母数を増やさないと、ヒットする確率も上がらないなと思うんです。これまでの商品がどれも間違いなくいいものをつくったという自信があったので、あとはマスに発信するだけでした。どうやってリーチ数を増やしてマスに届けていくのかは論理的に考えています。

――ものづくりは感性、発信はロジカル。頭を切り替えているんですね。

ハヤカワ:私がやっていることは、ひとつはブランドの指針などコアになる部分を決めること。それが決まれば、メンバーたちがプロダクトに落とし込んでいきます。その後、製品になってからの情報発信に関してはまた私が担当するという、ざっくりとした役割分担があるんです。

私は最初(指針)と最後(発信)を重点的にやっていますが、メンバーがいいものをつくると信じているので、前者を感性や情熱に任せ、後者は論理的に考えることができているんだと思います。

いいものをつくったからこそ、発信を工夫しないといけない

――さきほど「マスに届ける」という言葉がありました。いまの時代、マスに発信するむずかしさがあると思いますが、それでも「マスに届けたい」のはどういう思いからですか?

ハヤカワ:テレビや雑誌、新聞などのマスメディアの影響力が下がってきているように感じる一方、私たちソーシャルネイティブな世代はネットの発信力の強さを実感しています。つながることの強さといってもいいかもしれません。

私がつくるプロダクトやサービスのいちばんのユーザーって、私であることが多いんです。だから私が利用するメディアを通して発信すれば、ターゲットにも伝えることができると思っています。いまはSNSが中心ですが、雑誌広告なども打っていきたいですね。

そして、なぜマスに届けたいかというと、私と同じ関心やコンプレックスをもつ人は全国に数%くらいはいると思うので、そういう人に届けていきたいからです。正直なところ、私のプロダクトが「かわいい」という言葉だけで一人歩きしているのであれば、本心とは違う部分がウケているのかもしれません。そういう発信と受信のズレも含めて、しっかりヒットを当てていくのが仕事なのかなと思っています。

――「自分がほしいものをつくる」「自分がいちばんの消費者である」となると、プロダクトができる前には「売れない」と言われることも多そうですね。

ハヤカワ:実際、けっこう言われましたね。でもそこは私の販売力や広告の力でカバーしてきました。絶対にいいものつくった――少なくとも私がほしいものをつくれた――とき、あとは見せ方次第だと思うんです。

「そんなの売れないじゃん」という人は、意識が商品自体のほうにいきすぎているんです。発信についてあまり考えていなかったり、いいものは売れると思い込んでいたり……そういう人が意外に多いと思ってて。そうじゃなくて、いいものをつくったからこそ発信を工夫しないといけないんです。

極論ですが、広告の考えを使えば、安いものを高く売ることも可能です。私自身、中高時代にオークションサイトで転売をやっていたことがあるんですが、見せ方の違いで値段が全然変わるじゃないですか。そういう技術を適切に使うことが重要だと思います。とはいえ、確実にいいものをつくり、確実に広めて売る――とても地道なことをやるだけです。

flowerembroidery Set (feast by GOMI HAYAKAWA)

――プロダクトを発信するにあたって、どんな工夫をしているんですか?

ハヤカワ:いまはSNSなどでの発信が中心なので、誤解を生まないようには気をつけています。たとえば「品乳ブラ」という言葉やモデルさんの着用写真なども、解釈や見方によってはいやらしい方向に振ることもできると思います。そういうことが起きないよう、女性メンバーだけで話し合ったり、販促の材料をつくったり、女性カメラマンに撮影をお願いしたり……情報発信する前にも細々とした工夫をしています。