北康利 第1回
「平社員の開高健を"畏友"として認め、彼の才能を最大限引き出した。そこが佐治敬三の器の大きさでしょうね」

撮影:立木義浩

<店主前曰>

北康利をご存じだろうか。歴史的な大物人物を描く稀代のノンフィクション作家で、2005年には『白洲次郎 占領を背負った男』で第14回山本七平賞を受賞した。そのような脚光を浴びたからというわけではないが、わたしが以前から会いたいと思っていた男である。

彼は、わたしが責任編集長をやった雑誌『マグナカルタ』(Vol.5)に載せた開高健の"幻の講演"を、1987年、大阪天王寺高校の講堂で、1人の生徒として聴いた開高健の後輩でもあった。おそらく若き北康利はその講演に魂を揺すぶられ、将来、物書きになる夢を見たのではないだろうか。

北はこの6月、『佐治敬三と開高健 最強のふたり』(講談社)を上梓した。この本で北は、現在のサントリーが壽屋と呼ばれていた時代にコピーライターとして宣伝部に所属していた開高健と、その若き才能を寵愛した2代目社長佐治敬三との熱く固い友情を見事に描き切っている。

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シマジ まずはネスプレッソを一杯どうぞ。シングルモルトとともに、わたしがもう何年も愛飲しているイチオシのコーヒーです。

 ありがとうございます。とても美味しいエスプレッソですね。わたしは以前、1年間フィレンツェに住んでいましたので、この味にはすごく愛着があるんです。

シマジ 今回の謝礼として、後日これと同じマシンをお送りしますから愉しみに待っていてください。いや、それにしても、今日はありがとうございます。北さんには前からお会いしてみたかったんです。

 わたしもシマジさんには前からお会いしたいと思っていました。なんといってもシマジさんは、開高さんをはじめ、大物作家に可愛がられた稀有な編集者ですから。

シマジ 集英社に入社して「週刊プレイボーイ」編集部に新人として配属されて、はじめて担当した作家がたまたま柴田錬三郎先生だったのが強運だったのでしょう。それから今東光大僧正の「極道辻説法」の担当になったのも幸運でした。

立木 まあ、オーバーにいえば、はじめて飲んだワインが、ラターシュやロマネコンティだったという感じだろうね。