泣くな、清宮幸太郎!
〜恐るべき16歳の素顔

【特別読み物】「怪物」の夏が終わった
〔PHOTO〕gettyimages


大会前は誰も予想していなかった早実のベスト4進出。快進撃を支えたのは間違いなく、このスーパー1年生だった。注目を力に変え、甲子園で暴れまわった幸太郎の夏を徹底取材でレポートする。

文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

初めての挫折

泣くまいと決めていた。しかし涙は、「全国制覇」と書かれたハンドタオルでいくらぬぐっても、自然とあふれ出てくる。

準決勝までの4試合で、勝利後に整列して早稲田実業の校歌を歌うことは「クセになってしまいました」というほど、心地よい時間だった。しかし、準決勝で敗れたあとは、仙台育英の校歌を黙って聞くだけの逆の立場となった。

「本当に負けてしまったんだな、と実感しました。あの光景は忘れられません。ただただ悔しい」

甲子園の土は持ち帰らなかった。

「どうせまた戻ってくる。いらないっす」

名残を惜しむように、あるいは脳裏に焼き付けるように、ダイヤモンドの黒土や外野の芝を見やり、バックスクリーンを2度、3度と見上げた。

再び涙が頬を伝う。

「甲子園が見送ってくれているような気がして……。ありがとうという気持ちです。また戻ってきて先輩の分まで躍動できればいいなと思います」

清宮幸太郎、16歳の夏が終わった。

早実の怪物スラッガーが甲子園に刻んだ第一歩は、19打数9安打という驚愕の数字だった。1年生としては桑田真澄以来となる1大会2本塁打を記録し、稼いだ打点は8。

桑田はもとより、清原和博や松井秀喜といった、1年夏から甲子園をわかせた稀代のスラッガーと比較しても、遜色がないどころか、彼ら以上の球音を響かせた。

しかし、清宮に満足している様子は微塵も感じられない。驚いたのは、涙に暮れる中で発した次の一言だった。