週刊現代
「本土」の人間よ!
日米安保を支持するのであれば、基地を引き取れ

沖縄は本土のためにあるのではない

沖縄は誰のためにある

〔photo〕gettyimages

「本土」の責任を問う 本物の知識人の気迫

これは歴史に残る本になる。東大教授・高橋哲哉さんの『沖縄の米軍基地「県外移設」を考える』(集英社新書)を読み終えて、ふとそんな気がした。

表題は地味だが、中身は衝撃的だ。それも生半可な覚悟で書ける内容じゃない。リスクを冒しても言うべきことを言う。本物の知識人の気迫に打たれた。

岡本喜八監督の映画『激動の昭和史沖縄決戦』(1971年)の一場面が冒頭に登場する。

沖縄守備隊・第三二軍は、米軍との決戦を前に最新鋭の師団を台湾に引き抜かれ、危機感を強めた。姫路の師団の沖縄派遣の知らせに喜んだが、この決定は翌日大本営に撤回され、ぬか喜びに終わる。憤懣やるかたない様子で詰め寄る参謀本部作戦課長に作戦部長が一喝する。

「沖縄は本土のためにある! それを忘れるな。本土防衛が遅れている今、沖縄のために本土の兵力を割くわけにいかん」

高橋さんは言う。

〈「沖縄は本土のためにある!」/近代日本を貫く沖縄に対する態度を、たった一言に凝縮したような言葉ではないか、と私には感じられる。このようにして日本は、一貫して沖縄を、ただ自己利益のために利用してきたのではなかったか〉

明治政府による琉球王国の併合。「国体護持」の捨石にした沖縄戦。日本の主権回復と引き換えに沖縄を切り捨てた講和条約。米軍基地の押し付け。そして「抑止力」の名の下に強行される辺野古の新基地建設。

高橋さんはこうした歴史を踏まえつつ日米安保体制を〈沖縄を犠牲としてのみ成り立つ「犠牲のシステム」〉と言い、「本土」の責任を真っ向から問う。

焦点は国土面積0・6%の沖縄に在日米軍基地の74%が集中する現実だ。沖縄では今「日本人よ!今こそ沖縄の基地を引き取れ」という声が広がっている。「県外移設」の要求である。

初めから沖縄に基地が集中していたわけではない

高橋さんはこの声に応答しなければならぬとしてこう語る。

〈私の応答は「イエス」というものである。「日本人」は、沖縄の米軍基地を「引き取る」べきである。政治的・軍事的・経済的などの力を行使して、沖縄を自己利益のために利用し、犠牲にしてきた歴史を断ち切るために。そして沖縄の人びとと、差別する側される側の関係ではなく、平等な人間同士として関係を結び直すために〉

画期的な提言だと思う。私の知るかぎり、今まで真正面から基地を引き取るべきだと訴えた「本土」の知識人はいない。

そんなことを言っても、日本は米国の言いなりだから実効性がないのでは? と思われる向きもあろうが、それは誤解だ。高橋さんがその根拠を説明する。

実は敗戦後、「本土」と沖縄の米軍基地面積の比率は9対1で「本土」が圧倒していた。それが1972年の日本「復帰」のころ、ほぼ1対1となり、さらに現在の1対3へと沖縄の負担率が急速に増加していった。

その背景に何があったのだろうか。考えられる事情は一つ。「本土」の反基地運動の激化だろう。日米両政府はそれを避け「一般市民から部隊を“隔離”する」場所として沖縄を選んだ。「沖縄の方が置きやすい」「国民との摩擦・衝突が減らせる」という政治的理由からである。

現在、在沖米軍の6割を占める海兵隊はもともと岐阜県などに分散駐留していた。それが'57年に沖縄に移った。横田基地で騒音問題を起こしていたF4戦闘爆撃機の部隊も嘉手納基地に移駐した。こうして「本土」の基地は大幅削減され、負担が沖縄に転嫁される事態が繰り返された。

それだけじゃない。'72~'73年、米国は沖縄の海兵隊を米本国基地に統合する案を検討した。ベトナム戦争の泥沼化による財政難のためだった。その案が実現しなかったのは日本政府が金を出して引き留めたからだ。

まだある。2012年、米国は在沖海兵隊約1500人の岩国基地への移転を日本に打診した。山口県などが反発したため政府も移転案を拒否した。米国側は岩国以外への移転も求めたが、政府はこれも拒否した。

〈米国から提起された在沖海兵隊の岩国移転案をめぐる顚末は、「日本政府はアメリカにNOが言えない、というのは嘘だ」ということを示した。日本政府はこれまで、海兵隊の「本土」から沖縄への「隔離」を容認し、米国から撤退案が出てくればこれを引き留め、県外移設案が出てくればこれを拒否してきたのである〉と高橋さんは語る。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら