昨年、作家別売上No.1!
若き超人気作家が贈る温故知新のミステリー

【書評】西尾維新『掟上今日子の挑戦状』/評者 吉田大助

オリコンが集計している本のランキングで昨年、作家別売上1位に輝いたのは誰か? 西尾維新だ。

2002年、新本格ミステリーの登竜門「メフィスト賞」を20歳で受賞しデビュー。ヒロインたちが抱えたトラウマ=謎を、半吸血鬼の主人公が解決する伝奇ミステリー「〈物語〉シリーズ」で大ブレイクを果たした。

同シリーズを全18巻で完結後、西尾が新たに書き出したのが、このたび最新作『掟上今日子の挑戦状』が刊行された「忘却探偵シリーズ」だ。ヒロインの(萌える!)キャラクター造形力はそのままに、原点回帰。本格ミステリー作家としての才能を爆発させている。

公称25歳で、総白髪。職業探偵の掟上今日子は、どんな事件も(ほぼ)1日で解決する。なぜか? 

〈今日子さんの記憶は1日ごとにリセットされる(中略)どんな1日を送ろうと、翌朝になればそれをすっかり忘れている〉。

記憶喪失という業を背負いながら、その日のうちに事件を解決してしまう、優秀にして最速の「忘却探偵」なのだ。どうしても24時間で解決できない時は、左腕にマジックペンで、明日の自分に宛てた「置手紙」をする――。奇想天外な設定が、タイムリミットサスペンスの高揚感と、切ないドラマを生んでいる。

第3作に当たる本書では、これまで以上に真っ当に本格ミステリーのフォーマットを採用している。なにしろ全3編のメイントリックに採用されているのは、アリバイ崩し、密室殺人、暗号&ダイイングメッセージ。

そんな「古きよき推理小説」(作中の表現より)の題材が、西尾の想像力によって真新しいものへと生まれ変わっている。洋服店の試着室で白昼堂々見つかった死体を巡る第2編は、日本推理作家協会賞にノミネートされてもおかしくない仕上がりだ。

本書の刊行によって確定した事実がある。どうやらこのシリーズでは、ワトソン役が毎回替わる。ワトソンは名探偵の助手であると同時に、名探偵の活躍を記録する書記係でもある。それが毎回替わるとなれば、名探偵の過去と現在、物語の前後関係が途切れてしまうことになる。それこそが作者の狙いなのだ。各巻ごとに物語がリセットされるならば、どの1冊から読み始めても問題ない。

本シリーズは10月より、新垣結衣主演で連続ドラマ化されるが、これは、作者の願いでもあったという。多くの人が、「忘却探偵」を通じて本格ミステリーというジャンルへの(再)入門を果たすことになるだろう。

よしだ・だいすけ/'77年生まれ。「ダ・ヴィンチ」「週刊文春」「Quick Japan」など各種雑誌で書評・インタビューを執筆

『週刊現代』2015年9月5日号より

* * *

『掟上今日子の挑戦状』
西尾維新・著
税別価格:1250円

鯨井留可がアリバイ工作のために声をかけた白髪の美女は最悪にも、眠るたびに記憶を失ってしまう忘却探偵・掟上今日子だった…。完璧なアリバイ、衆人環視の密室、死者からの暗号。不可解な三つの殺人事件に、今日子さんが挑戦する!

にしお・いしん/'81年生まれ。'02年『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』でメフィスト賞受賞。『化物語』他

=> Amazonはこちら
 => 楽天ブックスはこちら



 ★ アーカイブ記事が読み放題
 ★ 会員だけが読める特別記事やコンテンツ
 ★ セミナーやイベントへのご招待・優待サービス
 ・・・など会員特典あり

お申込みはこちら