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急増中! 妻に先立たれて「家計崩壊」
〜年金は半分に! でも、出て行くカネはむしろ増える

週刊現代 プロフィール

遺族厚生年金は、遺された配偶者の厚生年金が、死亡した夫や妻の厚生年金の4分の3に満たない場合に発生する年金だ。

複雑なので、中里家の実例で見てみよう。妻の厚生年金は7万円。夫の厚生年金は10万円だ。

中里さんの厚生年金のほうが多いので、妻が死亡しても、中里さんには何の救済措置もない。

一方、仮に夫の中里さんが先に死亡したとする。妻の厚生年金は、夫の厚生年金10万円の4分の3=7万5000円に満たない。すると妻には妻自身の厚生年金との差額5000円が加算される。

さらに、もし妻が専業主婦だった場合を考えれば、妻自身の厚生年金はゼロなので、妻は7万5000円の差額をまるまる受け取る計算になる。遺族厚生年金はまさに、「専業主婦向けの救済策」なのだ。

年金収入が激減した中里さんの生活。独りになったのだから生活費も2分の1になるかと思いきや、そうはならないと中里さんは次第に気付いた。

「まずはアパートの家賃が4万5000円。これは独り暮らしでも夫婦でも、変わりはしません。

水道・光熱費も、半分にはなりません。会社勤めをしていた頃ならいざしらず、リタイア後のいま、家で電気やエアコンをつけている時間は独りになっても変わらない。

風呂だって二人暮らしだったら2回溜めるというわけじゃない。少しでも出費を削れないかと、水道の蛇口に節水ゴマを入れたり、シャワーヘッドを節水にしたりと考えを巡らせましたが、そんな工夫は女房がとっくにやっていた。

それに、独りだと夜なんかは家が静かすぎてね……。気が付けばテレビをつけっぱなしにしている時間が、むしろ増えていた。電気代がかさむのが怖いので、近頃は『3・11』のとき買った、防災用の手回し発電のラジオを引っ張り出して聞いています」(中里さん)

さらに、こんな例もある。中野区で表具店を営んでいた太田順吉さん(74歳・仮名)の妻は、化粧品メーカーの事務職だった。太田さんは言う。

「私は親から店を継いだんですが、自営業ですから年金は月5万円の基礎年金だけでした。妻のほうは会社の厚生年金が月4万円、基礎年金と合わせて9万円くらいもらっていた。その妻が一昨年、大腸がんで逝きまして。月14万円だった収入が、妻の遺族年金3万円と合わせても8万円になった。ほんとに毎日の生活が苦しいですよ」

商店街に面した自宅兼店舗は、築50年近い建物の固定資産税こそタダ同然だが、土地は借地で月2万円の地代がかかる。

夫婦がコツコツ貯めてきた預貯金は、妻の闘病を経て300万円まで減っていた。この蓄えを食い潰さないためにも、月4万円で生活しようと太田さんは目標を立てた。

「しかし、これがなかなかうまくいかない。一番もどかしかったのは食費ですよ。贅沢しているつもりはないのに、独りになって半分になるどころか、むしろ増えてしまった。最初は料理なんてどうしていいかわからないから、近くのファミレスに通ったんです。ところがファミレスで一人前食べると800円はする。朝晩2食で生活しても1日1600円。毎日食べたら月4万8000円で、とてもじゃないが続けられない」(太田さん)

これは自炊するしかないと考えた太田さんだったが、そこからも困難の連続だった。