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急増中! 妻に先立たれて「家計崩壊」
〜年金は半分に! でも、出て行くカネはむしろ増える

週刊現代 プロフィール

吉川さんは奥さんに捧げる詞を書き、知り合いのミュージシャンに歌わせてオリジナルCDを作成し、私たち知人、友人に配っていました。いま、それを聴くと、何て繊細な人だろうと改めて思います。きっと傷つきやすかったんだろうなと……」(前出・舞台監督)

吉川氏は複数の遺書を残していた。実兄には密葬にしてほしい旨などを書き残したほか、仕事の関係者には「1月から整理をしてきて、いまはすがすがしい気持ちです」などと綴っていたという。

妻に先立たれることで夫の負う精神的ダメージは、かくも深い。夫の多くは、心のどこかで、「男の自分は妻より先に死ぬ」とイメージしていることも、衝撃をより大きなものにしているだろう。

男性も長寿を謳歌するようになった現代、妻に先立たれる男性も増えている。そんななか、実際に妻を亡くした夫たちからは、心理的な傷を負っただけでなく、「生活ができなくなった」「もう老後破産するしかない」と、家計崩壊目前だという悲鳴があがっている。いったい、何が起こっているのか。

年金の救済策は専業主婦向け

練馬区在住で長年、都内の菓子卸会社に勤務していた中里正実さん(76歳・仮名)は、こう話す。

「うちの女房は、がんだとか、寝たきりになったとか、そういう長患いをしないで、2年前に突然、脳梗塞でぽっくりと逝ったもんですから、私はびっくりしてしまってね。

現実感がなくて、ぼうっとしているうちに、葬儀も済み、納骨も済み……。自分で買い物をしないと冷蔵庫が空のままだと気づいたのが、妻が亡くなってから2週間ほど後でしたかね……。スーパーで『牛乳の値段というのは近頃こういうものか』なんて思ったりしていたところに、年金の支給日が来たんですよ」

銀行で記帳した中里さん。その段になってようやく、もう妻の年金が入らないことに思い至った。

「家に帰って、妻のつけていた家計簿でかつての収入を確認してみてギョッとしました。月額計算では夫婦で28万円あった年金が、月15万円強に減ってしまったと分かったんです」(中里さん)

なぜ、そんなことになったのか。中里さんの妻は看護師の資格を持ち、二人の子供が乳幼児だった時期を除いて私立病院で勤務していた。

妻の生前、中里家の年金収入は月額換算で、夫婦各人の基礎年金が約5万5000円。厚生年金は中里さんが約10万円、妻が約7万円。月額収入は計28万円だった。

ところが、妻の死亡にともない、基礎年金と厚生年金の計12万5000円がごっそり減ってしまったのだ。老後の家計に詳しいファイナンシャル・プランナーの横川由理氏は、こう指摘する。

「厚生年金を受給している配偶者が亡くなっても、遺された妻や夫が遺族厚生年金を受け取ることができない場合があります。

ただ、厚生年金の制度は『夫が働いて専業主婦の妻を養う』という家族を前提に設計されている側面が強く、夫、妻ともに厚生年金を受け取っている共働きだった夫婦の場合、救済の効果は限定的なことが多いのです」