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ビットコイン事件「取調室の攻防」〜「IQ190」の天才vs.警視庁捜査二課
天才ハッカーの異名を持つカルプレス容疑者。アニメ好きでもある〔PHOTO〕gettyimages

消えた100億円のナゾ

取調官「個人口座が100万ドルも水増しされている。不正に口座データにアクセスしたのか」

カルプレス「口座を操作したことは事実だが、それは会社にとって必要な事務処理にすぎない。個人的に流用したわけではない」

取調官「マウント・ゴックス社から11億円もの資金が関連会社に貸し付けられている。顧客から預かった資金を不正に流用したのではないか」

カルプレス「ノン。これも正当な経理的処理だ。実際、事前に会計士にも相談している」

取調官「では、ビットコインはどこに消えたのか」

カルプレス「教えてほしいのは私のほうだ。これまで私は被害者としてデータを提出し、警察に相談している。『真犯人』を見つける捜査をしてほしい」

万世橋警察署(東京都千代田区)の取調室では今、こんな攻防が繰り広げられている。

'14年2月、仮想通貨「ビットコイン」の取引所「マウント・ゴックス」社が経営破綻した。同社社長のフランス人、マルク・カルプレス容疑者(30歳・以下呼称略)は、

「外部からの不正アクセスで約65万ビットコイン(当時のレートで約87億円相当)と、顧客から預かった最大28億円の資金がなくなった」

と説明し、自分も被害者であると強調。警視庁サイバー犯罪対策課に被害相談をしていた。

だが、同課から情報の提供を受けた警視庁捜査二課の捜査員は資料を分析して、こう確信するに至った。

「社内の口座データにアクセスできる権限は、カルプレスしか持っていない。カルプレスは被害者面をしているが、経営破綻は『自作自演』で、彼こそが会社を使って私腹を肥やした『首謀者』に違いない—」

捜査二課は8月1日、1年以上にわたる捜査の末、カルプレスを私電磁的記録不正作出・同供用容疑で逮捕した。社内のデータを改竄して、自分の口座残高を100万ドル(約1億2400万円)水増ししたというのが、容疑の内容だ。知能犯捜査のスペシャリスト集団、捜査二課が逮捕に踏み切ったカルプレスとは、いったい何者か。

彼は'85年にフランス東部のブルゴーニュ地方で生まれた。

「両親はともにIQ148以上でないと入会できない秘密結社『メンサ』のメンバーです。物理教師の母親による英才教育もあって、カルプレスは3歳でパソコンに触れてプログラミング言語を覚え始め、5歳のときには簡単なプログラムを書いていたそうです」(カルプレスの友人)

カルプレスは、有能なシステムエンジニアとしてネット通販会社やゲーム会社など、フランスのIT企業を転々とした後、イスラエルにわたり、その後、'09年6月に来日する。

「マンガやアニメへの興味が高じた結果です。小学生の頃から『幽☆遊☆白書』が好きで、アニメを見ているうちに日本語を覚えてしまったところからも、いかに知能が高いかがわかります」(前出・友人)

来日後、カルプレスは'11年3月に仮想通貨の取引所、マウント・ゴックス社を譲り受ける。同社のシステムに手を加えることで利便性を高め、'13年には世界最大のビットコイン取引所にまで成長させた。ビットコイン関係者はその手腕に驚嘆し、カルプレスは「天才プログラマー」の名をほしいままにする。

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