【現役医師が考える】薬品誤投与で患者死亡 
なぜ研修医だけが責任を取らねばならなかったのか

最も恵まれた病院で起きた事故

昨年の4月、国立国際医療研究センター病院にてウログラフィン(造影剤)を誤投与し女性を死亡させた事件で、7月、後期研修医に禁錮1年、執行猶予3年の判決が下された。

亡くなった女性とそのご家族の方々のことを思うと心が痛む。心からご冥福をお祈りしたい。しかし同時に、業務上過失致死容疑で書類送検され、執行猶予付きの禁固刑を言い渡された研修医の気持ちを考えると、他人事とは思えずいたたまれなくなる。

同じ研修医として、今回の医療事故について考えることを書きたい。

この事件で特記すべきは、国立国際医療研究センターという日本屈指の臨床研修指定病院で医療事故が起こったことだ。約460人の医師が働き、68億円の運営交付金(平成25年度)を受け取っている。我が国で最も恵まれた病院の一つと言っていい。

私が問題だと思うのは、事故に対する対応だ。私が知る限り、院長や部長が責任追及された、あるいは責任をとったという話は聞かない。造影剤を誤投与した研修医一人だけが刑事罰に問われた。

臨床研修指定病院では、上級医の指導のもとで研修医が処置や処方を行う。そして時に事故を起こす。運が悪いと死亡事故になる。

医療事故を起こしたのは研修医なのだから、その責任は研修医が取りなさいと言われると、処置することをためらってしまう。特に外科と産婦人科は医療訴訟が多い。私は産婦人科医になりたいと思っているが、今回の判決を知って、少なからず躊躇してしまうことは否めない。

医療事故は日常的に起きている

ではどうすればいいのだろう。

私は実態に即した議論をすべきだと思う。医療現場では事故は日常的に起きている。日本医療機能評価機構によると、2014年の医療事故報告件数は3194件と、2005年の調査開始以降最高の件数だった。