天津大爆発 習近平政権が隠蔽する「5つの疑惑」 ~実は犠牲者千人超、経済政策の失敗をうやむやに?

2015年08月23日(日) 福島香織

福島香織賢者の知恵

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疑惑③政治的責任問題の隠ぺい

【PHOTO】gettyimages

今回の爆発事故を招いた「政治的責任問題」について、何か隠蔽されているのではないか。

中国の規則では、まず危険な化学薬品倉庫の周辺1キロに、公共インフラ施設や居民区があってはならない。だが、現実には事故現場の1キロ圏内に高速道路の高架やモノレール駅や大手デベロッパー「万科集団」が開発した高級マンション群がある。

また、天津安全管理当局は、倉庫の中身の化学薬品リストを把握しておらず、しかも倉庫内は認可の何十倍もの量の危険化学薬品が保管されていた。

こうした違法行為がまかり通る背景には、必ず企業と官僚の癒着・腐敗があるはずだ。目下、新華社などが報じているところでは、倉庫の所有者は「瑞海国際物流有限公司」という、2012年に出資金1億元で設立された民間物流企業で、株主として登録されている李亮、舒錚という二人の男は単に名義を貸していただけだ、とのことだ。

本当に出資し企業の実権を握っているのは、元天津港公安局長の息子の董社軒と中央企業「中化集団」の天津支社副社長を2012年9月に退職した于学偉という男たちだという。二人は酒席で出会い、化学危険物の扱いを熟知している于学偉と、天津湾公安局にコネのある董社軒が組んで、危険化学品物流会社を設立。危険な化学製品の取り扱いは認可制で、競合他社が少ない分、市場がほぼ独占できるため、大きな利権となる。

于学偉は、2012年に汚職で失脚した中化集団天津支社の元社長・王飛の有能な部下で、この汚職にも関わっていたようだが、王飛が逮捕される前に、中化集団で培った人脈と部下と顧客を引き抜く形で独立。中国の捜査当局は于学偉、董社軒ら瑞海国際物流幹部10人の身柄を拘束した。

また、国家安全生産監督管理局長で2012年5月上旬まで天津市副市長であった楊棟梁を「重大な規律違反」で身柄拘束した。楊棟梁は、天津時代、ペトロチャイナなどと組んで天津の石油化学プロジェクトを推進し、習近平国家主席の政敵で、すでに失脚した石油閥のボス・周永康と昵懇である。

つまり、習近平政権は、この人災事故の政治責任を周永康閥の官僚に押し付けて、政治責任問題として幕引きしたい考えのようだ。

だが、本当に彼らだけに責任があるのか。2008年から天津市長を務め、昨年暮れから代理書記も兼務している黄興国は全く関与していないのか。黄興国は習近平が次の党大会(2017年)で政治局入りさせたいと考えている習近平閥のホープの一人であり、彼の立場を守るために何らかの情報を隠蔽しているのではないか。

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