経営は科学だ!〜経験や能力に頼らない職場づくりで、社員全員を戦力化する
日立物流・中谷康夫社長に聞く

私の座右の銘は「道なき道を行く」。大学時代は離れ小島で生活したり、無人駅や神社で野宿したものです。
仕事でも「道なき道を行く」のは同じですよ

'50年に日立製作所の子会社として創業し、同社の家電製品や重電プラントの巨大部品を運んできた日立物流。近年は「サードパーティロジスティクス(様々な企業の物流部門のアウトソーシングを請け負う)」に進出。同分野で業界トップに立ち、日立グループ以外の顧客で売り上げの80%を稼ぎ出す成長を見せている。売上高約7000億円、総従業員数約5万名の大企業を率いるのは、現場叩き上げの中谷康夫氏(59歳)だ。

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なかたに・やすお/'55年、東京都生まれ。'78年に法政大学工学部を卒業し、日立物流へ入社。20代では厳しい生活環境にあったナイジェリアで4年勤務するなど、過酷な任務に就く。'99年から米国へ出向し、'08年には日立物流(アメリカ)社長に就任。'10年には執行役常務に就任し、2013年より現職

我は嘆かず

弊社の物流倉庫には「無人搬送車」(AGV)がモノを運んでいるところがあります。旧来は、小売業者などのお客様から(商品をユーザーに発送する)オーダーが入ると、スタッフが伝票を見て、商品が置いてある棚に行き、持ってきて、配送ルート別の棚に置き……と手間がかかっていました。

でも、今はAGVが商品の置いてある、棚そのものを持ってやってきます。新技術を導入することで省人力化を実現し、かつ倉庫内での人為的ミスもなくすのです。運送業は長く重労働と思われてきて、景気がいい時は従業員が集まりにくい。でも、無いものを嘆いても仕方ないじゃないですか(笑)。

正すべし

弊社はすべてを「見える化」する企業です。仮に倉庫内で荷物を積んだピッキングカートが人に衝突したとしましょう。上司が「お前、気をつけろ!」と注意するようでは進化がありません。弊社は、倉庫内にカメラを設置して人の動きをデータ化し、レイアウトを変えるなどの手を打っています。何かに卓越した人間や、経験が長くスキルを持った人間が「なぜ間違えるんだ」と言っている企業は、間違いが正せません。

一方、経験や能力に頼らない職場を作れば、性別も年齢も国籍も関係なく、社員全員が戦力化できます。これは、私たちなりのダイバーシティです。

DNA

物流の仕事は、昔から「大人数を集め、力を合わせ……」という、いわば「力任せ」の職場でした。しかし弊社は、例えばITを使ってオペレーションを簡素化し、今までは社員でなければできなかった作業をパートやアルバイトでもできるよう変えていくのです。

車両の数、人員の配置、倉庫の広さ、すべてを最適化させていくことで、お客様に価値あるサービスを提供できます。日立という企業からうまれた物流会社だけに、このようなITによる効率化は、弊社のDNAと言っていいでしょう。