祝芥川賞受賞!『スクラップアンドビルド』は、閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説だ
インタビュー「書いたのは私です」羽田圭介
スクラップ・アンド・ビルド』著者の羽田圭介

―まずは芥川賞受賞おめでとうございます。この賞は4回目の候補での受賞となりますね。

高校生の時にデビューしてからプロとしての文学賞には6回落ちていて、受賞ということ自体が今回はじめてでした。もう落選慣れしていたので何も感じないと思っていましたが、受賞するとこんなに高揚感があるんだな、と実感しました。

―デビューして12年。作家としてどういう時期にいたのですか。

苦しかったのは3~4年前なんです。本を出しても売れず、芥川賞も何年も候補にならない状態で、方向を変えてエンタメ小説を書いても反響がなくて。

でも昨年「メタモルフォシス」で3回目の芥川賞候補になった時、落選しましたが予想外に褒めていただけたので、ああ、こういう方向でやっていけばいいのかなと分かりました。それで、また「メタモルフォシス」と同じように、生真面目な主人公が見当違いなことを始める物語を書こうと思ったのが、『スクラップ・アンド・ビルド』でした。

―「メタモルフォシス」は閉塞感を打破するためにSMを追求する会社員の男の話でした。今作は、母と二人で、87歳の祖父の世話をする28歳の無職青年・健斗が、密かな思いを抱いて介護に臨むという内容です。

いつも小説のテーマとして切実な問題を探しているんです。今回は、実際に僕の両親が母方の祖母を介護しているので身近な問題でしたし、誰しもが早死にしない限り老後問題には直面しますから、自分にとっても社会にとっても切実だろうと考えました。

ただ、「メタモルフォシス」はSMという奇抜な設定がある種のめくらましになりましたが、介護問題はどんな人でも想像しやすいから、ごまかしがきかない。洗練させていかないと駄目だろうと感じていました。

僕の両親が介護しているのは母方の祖母ですが、血の繋がりのない父のほうが面倒臭いことを引き受けている。父は長男ですが自分の母の介護は故郷の叔父に任せていたので、今度は自分がやらないと、という使命感があるように見えます。その姿を求道的に感じていた、ということもあります。

―健斗の祖父は、よく「早う死にたか」とこぼします。健斗はその願いを叶えてやろうと、あえて過剰に世話を焼いて彼の体力を奪おうとする。

自分も将来、同世代が死んで知り合いが少なくなったり足腰が弱り外出も難しくなったりすると、生きるのが辛くなりそうです。その時に、若い人が「それでも生き続けるのがいい」と勝手に言うのは間違っている気がしました。