野球
二宮清純「甲子園20勝、桑田真澄の原点」

 100周年を迎えた甲子園、最多の勝ち星をあげているピッチャーはPL学園で2度の優勝と2度の準優勝に貢献した桑田真澄さんです。1年の夏から5季連続で出場し、通算20勝(3敗)を記録しています。

 身長174センチと、ピッチャーとしては小柄な桑田さんですが、マウンドに上がると大きく映りました。ダイナミックなフォームの基礎をつくったのは、父・泰次さん(故人)でした。

 高1の頃から、桑田さんには「完成品」の趣がありました。ダイナミックなフォームからストライクゾーンの四隅にきっちり投げ分ける制球力は、まるで精密機械のようでした。

 少年時代、父親といったいどんな練習をしていたのでしょう。一度、本人に訊ねたことがあります。

 桑田さんは、こんな思い出話をしてくれました。
「空き地で父とキャッチボールをするでしょう。父が構えているミットにバチッと投げないと、ボールを捕ってくれんのです。こっちはヘトヘトになってボールを追いかける。で、またミットの位置にいかないと、走ってとりに行かされる。ホント、何回、ボールを(父親めがけて)投げつけてやろうかと思ったかわかりませんよ」

 まるで劇画「巨人の星」の星飛雄馬と父・一徹の関係です。路地を照らす夕焼けが目に浮かびます。

 さらに桑田さんは、こう続けました。
「あれは小学校2、3年の頃でしょうか。初めて父にグラブを買ってもらった。僕はもううれしくて寝つけないわけです。で、学校から一目散に帰ってグラブを手にすると、なんと綿が全部抜いてある。もう、何ちゅう親かと思いました」

「しかもキャッチボールの時、パチーンと音を上げないと怒るんです。僕はキャッチボールのたびに泣いていました。父も同じように綿のないグラブを使うのですが、小学生の頃は、とにかく父が捕れないようなボールを投げてやろうと、そればかり考えていましたよ」