賢者の知恵
2015年08月21日(金) 週刊現代

【特別対談】内田樹×水野和夫 
資本主義の限界とニッポンの未来〜経済が縮み続ける時代をいかに生きるか

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多くの人が、株価に振り回されている〔PHOTO〕gettyimages

日本は好景気って、本当なのだろうか—。ニュースを見ながら、ふと疑問に思ったことが誰にでもあるだろう。転換期を迎えている経済の「仕組み」について、思想家と経済学者が語り合った。

中国バブル崩壊は必然

内田樹 水野先生とは、前々からお話ししたいと思っていたんです。先生は昨年ベストセラーになった『資本主義の終焉と歴史の危機』で、いま資本主義が限界を迎えていることを、経済史を紐解きながら説明されていた。

株式市場の動向や企業の四半期決算など、狭い範囲の、短い期間の情報に振り回される経済学者が多いなか、先生は時間的にも空間的にも「ビッグデザイン」を描かれていて、新鮮でした。

水野和夫 現在の世界では、いたるところで過剰生産に陥り、これまでのような経済成長はもはや見込めません。これは13世紀以来、8世紀に及ぶ資本主義の歴史でも初めてのこと。世界経済は、歴史上の転換点にあると書いたのが、拙著でした。

内田 水野先生のお話からは、資本主義が限界を迎えた世界の「これから」について、しっかりと考えないといけないと思わされます。

しかし現実には、一般の人たちでさえ、経済成長政策に期待を馳せ、毎日の株価に一喜一憂している。カネ儲けばかり考えているようです。

水野 そうですね。資本主義が行き詰まる一方で、カネ儲けに躍起になる人々が溢れている。

そんな世界の象徴が、中国経済です。大きな歴史の流れの中で、中国がバブルの崩壊過程にあるのは間違いないでしょう。

'80年代の日本では、株や不動産の異常な高騰とともに、実体経済よりも過剰生産に陥った結果、バブルが崩壊しました。中国の現状はさらに過剰です。一例を挙げると、中国のGDPは世界の1割なのに、粗鋼生産は5割も占めています。

内田 中国に限らず、消費動向というものは幻想だと思うんです。日本のバブルの時も、時給750円のラーメン屋のアルバイト店員が全額ローンを組んで、ロレックスの腕時計をはめていたものです。

それは、将来的に収入が増え続けるという幻想に基づいた消費行動で、本人の実力とは無関係。だからやがてどこかで行き詰まる。「爆買い」に走っている中国も同じです。

水野 中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立するのも、「カネを貸すから中国製の鉄を買ってビルでも建てろ」ということでしょう。バブル時の日本の金融機関がそうだったように、AIIBはグローバルな規模で不良債権を抱える危険が高いと見ています。

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