新白河原人22 丸太小屋をつくる14
〜上棟

【特別公開】守村大『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』

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丸太小屋をつくる14 上棟
 

待望の棟上げじゃ。11段、2m80cm強の壁組みの上に、屋根を支える重要な3本の長材を天空に捧げるように据える。屋根の頂部に位置するのが棟木(むなぎ)だ。

2面が頂部で合わさる屋根を切妻(きりづま)屋根とか拝み屋根、あるいは、手の平を合わせた姿になぞらえて合掌屋根という。棟木はその要に位置し、家屋と住人を守護して屋根の天頂に鎮座する。古来、人々は家屋の建ち上げにおいて、棟を上げる仕儀を神聖として祀ってきた。めでたいと、ありがたい事であると。

痛々しい程に非現実的で非力でひ弱で根本的に生きる力に乏しい男が、何やら、どうやら、ともかくも、逞しいと言っていい の力をひとつ手に入れたことを象徴する瞬間が、この棟上げであると感じている。そのことは、とてつもなく、ふるえる程にめでたい。

棟木は2本の丸太を継いだ9mもある長材だ。これを地上7mの高みに据える。鉄人君ではいかにしても到達できない。しかも、どうあがいても一人で全うできる仕事ではない。

そこで、古くからの友人でバイク仲間のS君に、茨城県つくば市から馳せ参じてもらった。彼はユニック(荷台にユニッククレーンを装備したトラックの呼称)を所有し、プロのクレーンのオペレーターでもある。持つべきものは友、甘えてしまえ。S君をガソリン代だけでコキ使う。

それにしてもユニックの揚力は、それが本務であるだけに鉄人君の比ではない。S君の手際もさすがプロ、素人を圧倒する。片手でリモコンを操作して着々と作業は進捗する。

あ、今、棟木がゆっくりとしっかりと吊り上がり、所定の位置に向かい中空を移動していく。来た、きっちりと棟束(むなづか *棟木を支えるために立てる柱)の真上に。たはあ、胸が高鳴って切ない。ひとりよがりとひとりぼっちの狭間で、非力にムチ打ち奮闘してきた私の幻想じみた仕事が、今にも現実として結実する。

ガッポン、ガッポン、ぎゅっ、びしっ。上から掛矢でぶっ叩くと、棟木は確固と揺るぎなく収まり天空に堂々と鎮座した。

この上なくめでたい。餅でも撒こうか。

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守村 大(もりむら・しん)
1958年生まれの漫画家。モーニング(講談社)にて連載された『万歳ハイウェイ』『あいしてる』『考える犬』など、代表作多数。現在東北新幹線・新白河駅から車で10分の里山で開墾生活をしながら、モーニングにて『新白河原人』の漫画版『ウーパ』を連載中。

守村大・著
『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』

講談社 定価:1,500円(税別)

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