新白河原人21 丸太小屋をつくる13
〜頑張れ鉄人・壁組み完了

【特別公開】守村大『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』

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丸太小屋をつくる13 頑張れ鉄人・壁組み完了
 

9段目まで積み上がり、開口部が開かれ、壁高も2m30cmに達し、壁組みも大詰めを迎えつつある。あと2段、残りあと50cm程。

しかしながら、ここからがはなはだ困難な仕儀に相成った。私の相棒・鉄人君の吊り上げ揚程(ユンボのアームを押し上げられる高さのこと)の限界に近い。ユンボは整地が本来の職務。それをクレーンというイレギュラーな任務を与えられ、ここまでは律儀な活躍、せつないほどの奮闘を見せてくれた。けれども、それが壁組み最終段階にきて困難な状況を呈している。

それでも、ひれひれ、ぎりぎり、つんとバケツのツメ先を伸ばし、何とか10段目を積み上げてくれた。よくやった、鉄人。しかしながら、まだある。あと1段。最終段。壁組みの最上部と屋根裏部屋の床を支える梁材の丸太が、しめて7本も残っている。

届かない。鉄人は腕を目一杯振り上げツメ先を伸ばして何度も挑むのであるが、クォーンと軋み、哀れな悲鳴をあげるばかりで、どうしたってこれ以上は上がらない。届かない。達しない。頑張れ鉄人! 歯を剥き、目を三角にして叱咤激励する私であるが、鉄人は悲しく呻き、中空に吊られた丸太は、空しく、危なっかしく揺れているばかり。無理なものは無理なのじゃ。

「ああ、クレーンがあれば」と鉄人を傷つけるような言葉を吐く浅ましい私。へこみ、うなだれると、ひとつのレバーが目につく。排土板のレバー。鉄人の前部には小さな排土板がブルドーザーのように装備されている。これを押し下げれば、わずかばかりであるが背伸びするように車体は持ち上がるはず。いけるかも。一瞬後、自失は希望に、そして新たな闘志へと昇華する。

排土板を目一杯押し下げると、鉄人は残る力を振り絞りツマ先立ちで伸びをする。腕を突っ張る。ツメ先を天に突き上げる。

あと少し! ほれ、頑張れ鉄人! きえーっ! ヨイショ。と。くはあ。上がった、上がりやがった。なはあっ。感動したあっ。あうあうう。

言葉にはならぬ。涙がにじむ。鼻水も垂れてきた。

都合11段、壁組み完了。消耗は達成感に変わり、私の中に満ちた。

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守村 大(もりむら・しん)
1958年生まれの漫画家。モーニング(講談社)にて連載された『万歳ハイウェイ』『あいしてる』『考える犬』など、代表作多数。現在東北新幹線・新白河駅から車で10分の里山で開墾生活をしながら、モーニングにて『新白河原人』の漫画版『ウーパ』を連載中。

守村大・著
『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』

講談社 定価:1,500円(税別)

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